アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.19

平成24年11月10日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

『橋本式国語勉強法』
   橋本 武 著(岩波ジュニア新書)

『銀の匙』
   中 勘助 著 -橋本 武 案内- (文春文庫)

『エストニア紀行-森の苔・庭の木漏れ日・海の葦-』
   梨木 香歩 著(新潮社)

『ルーズヴェルト・ゲーム』
   池井戸 潤 著(講談社)

一冊目のオススメは、かの伝説の元灘中高国語教師・橋本武先生の『橋本式国語勉強法』です。
読書コラムvol. 12 でご紹介した『<銀の匙>の国語授業』に続く早くも岩波ジュニア新書第2作目の著作ですが、前作以上に、橋本先生の国語教師としての国語の面白さを伝えたい、国語の力をつけてあげたいという愛情に裏打ちされた徹底した姿勢が隅々にまで行き渡った著作です。1968年に出版された本の改訂版ということですが、全く古さは感じさせず、後に続く者としては恐るべき書物です。国語教育関係者にとどまらず、教える事を仕事としているすべての人に推薦したい著作です。さらに、今月小学館文庫から橋本先生の詳しい注釈がついた『銀の匙』が刊行されました。興味をお持ちになってくださった方はこちらもぜひどうぞご一読を!!

二冊目の梨木香歩さんは、夏の第一回アトリエ読書大賞(冬も第二回を開催予定です!!)の時に、小5生の塾生に教えたもらった作家(『西の魔女が死んだ』の作者)ですが、今回はその作家の紀行文・エッセイです。なぜエストニアなのか、という深くて重い問いかけへの答えはこの本をじっくり読んでいただくとして、この作者独特の感性が文章の至る所で光っていて、穏やかで素直な自分に戻れます。ですが、決して読みやすいエッセイというわけではなく、立ち止まり考え立ち止まり考え、という作業を読者に強いる文体です。本の装丁もとても素敵で、中央にあるカラー写真四十数枚もこの優れたエッセイに彩りを添えています。

最後は、読書コラムvol.9でご紹介した直木賞作家、池井戸潤さんの『ルーズヴェルト・ゲーム』です。舞台は、イメージセンサーの技術においてはライバルのミツワ電器だけでなく、業界でも一目置かれる存在の青島製作所。この会社の野球部の誇りと存亡を賭けた経営陣と野球部員たちの熱い闘いが繰り広げられるヒューマン・ドラマです。池井戸氏は、中小企業に生きる人間たちの弱さや醜さがきっちりと描きつつ、かつ、人の優しさや志も描くことのできる稀有な作家です。皆と力を合わせて生き抜くことの素晴らしさ、地道にコツコツと生きていくことの大切さをいつも教えてくれる作家でもあります。日本経済新聞社の最新刊『七つの会議』も大変楽しみです。

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