アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.12

平成24年4月14日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

橋本 武 著 『<銀の匙>の国語授業』(岩波ジュニア新書)

ジョン・ハート 著 東野さやか翻訳 『ラスト・チャイルド』(早川書房ハヤカワ文庫)

藤沢 周平 著 『風の果て』(上・下)(文春文庫)

あの灘高の名物国語教師で、私の畏敬する橋本武先生が、ついに100才で岩波ジュニア新書に登場しました。お坊ちゃん学校であった灘中高を全国レベルの学校に押しあげた陰の立役者といわれる著者が、その背骨と言われる国語力の養成の秘密を惜しげもなく開陳してくれます。橋本先生のファンの方でなくても、国語教育に従事している方に是非ご一読をお願いしたい、大変自分自身の不勉強に冷や汗の出る一冊です。本当に橋本先生はスゴイ!!

さて、秋に妻が入院した時から読み始めたジョン・ハートの「ラスト・チャイルド」を半年以上かかってついに完読しました。主人公の少年ジョニー・メリモンと、主人公と主人公の母を渾身の捨て身の姿勢で守るハント刑事を軸に親子・兄弟・家族・友情を読む者に問いかけて、ミステリーの枠を大きく超えて追求する深くて重いしかし見事な作品でした。北上次郎氏の謳い文句に誘われて、ついつい読み始めたのですが、そのメリモンとハートの熱い「想い」に最後までページをめくる手がとまりませんでした。ミステリーファンの方には、特にオススメです。

つらい時、耐えている時の藤沢周平氏の作品はじわじわと響いて来ます。今回は藤沢氏晩年の傑作の一つに数えられる「風の果て」(上・下)をご紹介します。今回で3度目ですが、若い時に読んだのと、随分「作品の風景」が違ってみえます。主人公隼太(改め又左衛門)の一生をその青春時代の仲間との想い出を随所に織りこみながら、話がドラマチックに展開していきます。特に未開の荒れ地の開墾を目指す義父桑山孫助との再会の場面の二人のやりとりとその背景の「太蔵ヶ原」の情景描写が今回は心にしみ、目にやきつきました。後半の農民たちと対峙する主人公の姿からも目が離せません。すべての人にオススメです!!

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