アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第51回

平成30年2月

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

受験シーズン真っ盛り。受験生の皆さんは体調管理には十分気を付けて本番に臨んでください。ここまで来ると、あとは体力勝負!

こちらのコラムは前回の続きということで、昨年私が映画館で観た作品の22本目からのご紹介です。

(22)ジーサンズ はじめての強盗(2017 アメリカ)

以前、このコラムでもご紹介しましたが、お金に困った普通のおじいさん3人が銀行強盗をするという犯罪コメディです。年金制度の問題など、アメリカで社会問題となっている事柄がベースになっているので、無謀なお話も妙に納得・共感してしまうのです。主役3人を演じる老名優たちのやり取りも微笑ましくてナイスです。

(23)22年目の告白-私が殺人犯です-(2017 日本)

韓国映画『殺人の告白』のリメイク作品です。かつての連続殺人犯が事件の時効とともに自白本を出版、テレビにも出演して人気がでるのだがその真意は?というサスペンス・ドラマです。オリジナルが傑作だっただけに心配はあったのですが、杞憂に終わりました。ラストも更にひねりが加えられ、ただ単なる焼き直しではなく、非情に楽しめる作品になっていました。

(24)おじいちゃんはデブゴン(2016 香港+中国)

動ける太っちょがはやりの昨今ですが、その元祖とでも言うべき人がこの人、デブゴンことサモ・ハン・キンポー。ジャッキー・チェンの兄弟子にしてカンフー・アクションの達人。そしてどこかユーモラスな感じがするのが彼の魅力です。今作では、孫のように可愛がっている女の子を身体を張って犯罪組織から守るおじいちゃんを熱演しており、更に格闘技に凄味が増しています。ちょっとおセンチなシーンが多すぎかな。

(25)ジョン・ウィック:チャプター2(2017 アメリカ)

ぬぼーっとしたキアヌ・リーブスが滅茶苦茶カッコいい『ジョン・ウィック』の第二弾。今回は世界中の殺し屋たちから命を狙われるという展開に。バンバン撃ちまくる相変わらずスタイリッシュなガン・アクション・シーンに惚れ惚れします。殺し屋世界にはその世界のルールがある、という設定が面白く、それを受け入れることで作品が完成します。

(26)コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝(2016 香港+中国)

ちょっと昔の中国でのお話。ある将軍のバカ息子がある村を力ずくで占領しようとしました。そこに風来坊がやって来て、村人たちと力を合わせて侵略者を撃退しました。という簡単なお話です。が、その中身はカンフー・アクションありスペクタル・シーンありお笑いありの、これぞエンタテイメントと言うのに相応しいものでありました。余は満足じゃ。

(27)ハクソー・リッジ(2016 オーストラリア+アメリカ)

メル・ギブソンが第二次世界大戦の太平洋での日米の激戦を描いた戦争映画。とにかく戦闘シーンが凄まじい!人体破壊描写が満載です。本当の戦場はこんな風なんだろうな。いやだいやだ。この映画の救いは、主人公が人を殺めない、博愛主義を貫き通す信念の持ち主であることです。その徹底ぶりに感動します。傑作です。実在の人物をモデルにしていますが、日本軍なら絶対に認められない兵士だろうな。お国柄の違いも分かって面白い。

(28)心が叫びたがってるんだ。(2017 日本)

小学生時代のトラウマから人と話すことが出来なくなった少女を中心に、学校祭を間近に控えた悩み多き高校生たちを瑞々しく描いた同題名の傑作アニメーションの実写版です。違和感なくアニメがまるまるそのまま実写化されており、アニメ・ファンも抵抗なく受け入れられるのではないでしょうか。芳根京子はじめ出演者も役に溶け込んでいます。

(29)ベイビー・ドライバー(2017 アメリカ)

銀行強盗逃走者の若きドライバーを主人公にした犯罪アクション。何がいいって、音楽と映像のコラボがカッコイイ。なんせ主人公はいつもイヤホンで音楽を聞いているドライバー。ノリノリの音楽に合わせて車をぶっ飛ばすんですから調子いいに決まってます。歩いているシーンでさえ、ちょっとミュージカルみたいで楽しいです。

(30)スキップ・トレース(2016 アメリカ+中国+香港)

ジャッキー・チェンとレニー・ハーリン監督がタッグを来んだ冒険アクション風コメディ。中国を舞台にドタバタと暴れ回ります。と言ってもジャッキー単体ではなく、コミカルなアメリカ人とのバディものであります。最近のジャッキーは年のせいかさすがにハードなアクションは減ったけど、今回は大いに頑張ってます。

(31)関ヶ原(2017 日本)

天下分け目の決戦、関ヶ原の戦いを各陣営から描いた歴史スペクタル。武士たちの虚々実々の駆け引きや権謀術数を織り交ぜながら合戦へと進んで行きます。くノ一の恋を描くなどちょっと欲張り過ぎたところがあり、リズムが崩れた感も否めません。出演者の中では、平幹二郎の息子、平岳大に注目です。家康役の役所広司は相変わらず巧い。

(32)新感染 ファイナル・エクスプレス(2016 韓国)

やって来ました韓国のゾンビもの。ウィルス感染で凶暴化する人間だから正確にはゾンビではないんだけど、今やこのパターンが主流を占めていますね。主な舞台は韓国の新幹線内。密閉された空間でのゾンビからの逃避行がスペーディーで緊迫感溢れる描写で展開します。勿論、残酷表現もグッド。娘を思う父親、男気溢れる兄ちゃんなど、登場人物がしっかり描かれており、彼らの行動が涙を誘います。ホラー映画で感動すること間違いなしの傑作です。

(33)エイリアン:コヴェナント(2017 アメリカ)

本作と同じくリドリー・スコットが監督した「プロメテウス」の続編にして「エイリアン」の一作目の前日譚にあたる作品です。エイリアンものですからそれなりにハラハラドキドキさせてくれますが、話がだんだんと複雑になってきて、もうこの辺でこのシリーズも打ち止めにした方がいいのではないかと思います。

(34)ダンケルク(2017 イギリス+アメリカ+フランス)

第二次世界大戦初期、連合軍がフランス北部のダンケルクに追い詰められ、そこからイギリスへの大撤退を敢行しました。本作はその状況を様々な兵士、民間人の人の目から描いた群像劇です。人気のクリストファー・ノーラン監督作ですが、スケッチ風なので、全体としては強い印象が残らないのが残念。戦闘機の空中戦が一番素晴らしい。

(35)ドリーム(2016 アメリカ)

初期アポロ計画に参加したNASA職員たちの奮闘物語。と言っても主人公たちは黒人女性。様々な人種差別を乗り越えて前へ前へと進んで行く彼女たちの姿には勇気を貰えます。差別をはじめ、困難に立ち向かう人やそれを助ける人がいるという素晴らしい人間同士の繋がりが感動を呼びます。幸いことがあっても、先ずは笑い飛ばせる気持ちを持ちたいです。

(36)スイス・アーミー・マン(2016 スウェーデン+アメリカ)

これは何とも久々に観たへんてこりんな映画です。無人島に漂流した男が、同じく流れ着いてきた死体を利用して島から脱出。たどり着いたジャングルでも死体と共に人家を探すという、人を食ったような作品です。でも、ふざけた映画かと言うとそうではなく、観ているうちに彼らの仲が睦まじく見えてくるし、悲しい結末になったりするし、一筋縄ではいかない気になる作品になってしまいました。

(37)ミックス。(2017 日本)

ミックスとはお好みのミックス焼きではなく、卓球の男女混合ダブルスの意味です。かつては卓球天才少女で今は失意のOLが、可笑しくも素敵なメンバーに支えられながら卓球、恋、そして人生に希望を取り戻していく再生物語であり、大いに笑って泣けて感動するスポ根映画です。主人公の恋はどうなってしまうの?と思わせたり、脚本が実に巧いなぁ。それにしても、脇役出演の蒼井優のぶっ飛んだ演技にはビックリです。

(38)バリー・シール/アメリカをはめた男(2017 アメリカ)

麻薬や武器の密輸などヤバい仕事で一財産を成した実在の人物をトム・クルーズがいつものように明るく熱演。彼が演じると犯罪者もいい人になっちゃいますね。パイロットだった主人公が犯罪ビジネスを拡大していくわけですが、その裏にはCIAも関わっているという裏事情が面白く、かつ怖い。

(39)斉木楠雄のサイ難(2017 日本)

これはまたゆるーい映画。並外れたサイキック能力を持つ高校生が主人公なんだけれど、この子がいたって真面目な子なので、自らその能力を封印しようと頑張ります。そこに色んな人物が迷惑にも関わって来て脱力系の騒動が起こります。まあとにかく、のーんびり楽しむコメディですね。橋本環奈の変顔がこんなに沢山観られるのも貴重であります。

(40)ノクターン・アニマルズ(2016 アメリカ)

社長業をこなすセレブ女性の現在の姿を描いたシーンと、彼女の元夫から送られて来た小説の原稿を映像化したシーンとが交互に現れる構成をとったミステリアスな映画です。開幕早々の太った女性たちのヌード・ダンス・シーンから、スタイリッシュかつ異様で緊張感に溢れた映像世界が展開されます。誘惑殺人を描いた小説世界と現在がダブって来て、なんだかいやーな気分にさせられる後味の悪さがクセになる素敵な映画です。

(41)泥棒役者(2017 日本)

一軒の家の中だけで展開されるドタバダ・シチュエーション・コメディ。作家の豪邸に侵入した泥棒が編集者に間違われたことを手始めに、登場人物それぞれの勘違い思い違いが可笑しな方向に突っ走っていきます。そして最後は予想通り、心がほっこりするお話になります。やはりこうく作品は脚本と俳優たちが巧くなくてはなりません。中でも市村正親はさすがに巧いですね。どんな役をやっても。

(42)密偵(2016 韓国)

日本軍が統治していた時代の朝鮮半島でのお話。対日工作品を捕まえなくてはならない現地警察官の苦悩が、諜報活動や銃撃戦を織り交ぜながら描かれます。勿論、予想通り最後は対日側になります。韓国で大ヒットしたそうですが、それには頷けますね。日本人将校役で鶴見辰吾が出演していますが、ただの悪役に終わっているのが残念。

(43)ゲット・アウト(2017 アメリカ)

白人の恋人の実家を訪れた黒人青年が体験する恐ろしい出来事。登場する人物がみんなにこにこしていて怪しく、人種差別主義者の中に放り込まれた青年の悲劇ではあるのですが、その人種差別を逆手に取った脚本の妙が効いており、白人にはキツイ一発です。そしてなんとなんとアカデミー作品賞にもノミネートされました。ホラー系作品が認められてうれしい限りです。

これで全43作品の終了です。昨年は少なかったなぁ。反省。
来年受験を迎えるみなさんは反省することがないよう、思いっきり勉学に励んでください。

リラックス・タイムは映画鑑賞のみ!?

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