アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第50回

平成30年1月

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

新年明けましておめでとうございます。随分ご無沙汰してしまいましたけれど、皆さんは元気に勉強その他諸々に精を出して、寒い日々を元気に過ごされているでしょうか。今期の冬は、寒くなるのも根雪になるのも早かったですからね。そんなこんなでアッという間に1年が経ってしまいましたので、恒例の私が2017年に映画館で観た作品の感想を徒然なるままに書き始めようと思います。毎年のように観た順で発表していきますね。

(1)バイオ・ハザード ザ・ファイナル(2016 アメリカ)

日本が生んだゾンビ系テレビ・ゲームを映画化した『バイオ・ハザード』シリーズの最終作(?)。主人公アリスを演じるミラ・ジョボビッチが今回も暴れまくるが、シリーズが進むにつれて主人公が無敵になっていくので、ハラハラする緊張感が無くなっているのが残念。取り敢えず、ここで打ち止めにしておいた方がいいね。

(2)ネオン・デーモン(2016 アメリカ+フランス+デンマーク)

ファッション写真のモデル業界を舞台に、モデルたちのドロドロした妬みをスタイリッシュかつ不気味な映像を駆使して描いた愛憎劇。一種のホラー映画と言ってもいいかもしれない。ヒトの目玉が嘔吐物から出て来るなど、トリップ感たっぷりでグロテスクな描写もあり、病み付きにならないように注意しよう。

(3)ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016 イギリス+アメリカ)

ハリー・ポッターの原作者が書いた、ハリーたちより前の時代の魔法使いたちを描いたお話。まさにファンタスティックなビーストたちが登場して、これもシリーズ化になるだろうと思わせる楽しい作品になっている。普通の人間と魔法使いの交流を面白可笑しく、かつ心優しく描いたところにも好感が持てる。

(4)海賊とよばれた男(2016 日本)

出光石油の創業者をモデルにしたベストセラー小説の映画化。海外資本のメジャー系石油会社に立ち向かい、国内資本の石油会社を立ち上げた男の一代記を戦前戦後の激動期を舞台に骨太に描いている。こんな日本人がいたから、今の日本があるのだと思わざるを得ない。とにかくエネルギッシュ!近くにいると疲れそうだけれど。

(5)スノーデン(2016 アメリカ)

CIAの情報部にいたスノーデン氏が、CIAの違法な個人情報収集活動を暴露した事件は日本でも話題になった。本作はその事件を映画化した作品。現代社会においてプライバシーは無いのではないかと恐ろしくなります。救いは、悪事を告発する勇気が人間にはあるということだ。

(6)マグニフィセント・セブン(2016 アメリカ)

世界の黒澤明監督作『七人の侍』を西部劇に置き換えて作った『荒野の7人』のリメイク作品。現代の映画らしく、悪党相手に派手にドンパチやって威勢がいいぞ。そして何より、己の誇りのために命を散らすガンマンたちに涙する。誇りを失わない彼らの精神は、七人の侍たちからしっかり受け継がれているのだ。

(7)ザ・コンサルタント(2016 アメリカ)

病的に几帳面で数字には滅法強い草食系会計士は表の顔。裏の顔は腕利きのスナイパーでありました。という、一見弱そうな奴が実は凄かったものの一遍。サスペンスフルで緩急織り交ぜた演出で、最後まで緊張感途切れずに楽しめる。主役を演じる眠そうな顔のベン・アフレックもいい味出している。

(8)トリプルX:再起動(2017 アメリカ)

『ワイルド・スピード』シリーズで有名なヴィン・ディーゼル主演の娯楽スパイ・アクション映画。ド派手なスペクタクル・シーン満載でハラハラドキドキの連続。そしてコミカルでユーモラスなところもあり。こういうタイプのノー天気な娯楽映画はやはりアメリカのお家芸だな。実に面白くて巧い。カネの掛け方も日本とは段違いだしな。

(9)ラ・ラ・ランド(2016 アメリカ)

音楽学校師弟の狂気の対決を描いたアカデミー賞作品『セッション』の監督のミュージカル映画。ボーイ・ミーツ・ガールでハッピー・エンディングにならないとろこがこの監督らしいところ。開巻早々の、高速道路で皆が歌い踊り出す躍動的なミュージカル場面がまさに圧巻。こちらも一緒に踊りたくなるぜ!

(10)この世界の片隅に(2016 日本)

太平洋戦争時において、広島に住むごく平凡な女性を主人公にして戦争の悲惨さを描き切った見事な作品。ドラマチックに声高に反戦を叫ぶのではなく、日常の生活に戦争の影が落ちていく様を静かに淡々と描いているところに普遍性を感じる。超ロングラン・ヒットしたので観た方も多いのでは?世代を超えて見続けられるべき映画だと思う。

(11)ヨーヨー・マと旅するシルクロード(2015 アメリカ)

世界的に有名なチェロ奏者ヨーヨー・マ氏が主宰する音楽集団が、地元の音楽家とも共演しながら演奏旅行する様子を撮影したドキュメンタリー映画。音楽集団のメンバーにも様々な人種や人間がいるけれど、音楽は言葉や肌の違いも超越する。

(12)ムーンライト(2016 アメリカ)

2017年のアカデミー作品賞を獲った映画。治安が悪そうな町に住む下層階級だけれど心は純粋な黒人少年の成長期で、一人の主人公を3人の俳優が演じている。どういう展開になるのだろうと期待していたら、同性同士の愛の物語になっちゃった。なんだか拍子抜け。

(13)SING(2016 アメリカ)

人間をいろいろな動物に置き換えて描いた楽しい音楽アニメ映画。寂れた劇場を再興させるための歌手選抜オーディションに歌に自信のある奴らがやって来るが、個性溢れる各動物キャラクターが魅力的で、歌もキャラにピッタリ。そして最後はハッピーな気分になる。日本語版で観たが、吹き替えの完成度の高さにビックリ。

(14)キングコング:髑髏島の巨神(2016 アメリカ)

泣く子も黙るキングコング映画の最新作。のっけからスペクタクル・シーン満載で血沸き肉踊ること間違いなし。不気味な怪獣がウジャウジャ出て来て人間たちを襲ったりコングと戦ったりと、ハラハラドキドキな見せ場の連続で大満足。これだから怪獣映画はやめられまへんなあ。

(15)バーニング・オーシャン(2016 アメリカ)

実際に起こった海上油田基地の大爆発事故を描いたパニック映画。爆発に至るまでの過程をジワジワとしたサスペンスで盛り上げて行き、凄まじい爆発で一気にスペクタクル・シーンが襲って来る。まるで現場にいるような臨場感だ。費用を惜しんだ手抜き検査の結果が爆発した原因であり、悲しいかな、事故を起こすのは人間の危機感の欠如だ、ということがよく分かる。

(16)人生フルーツ(2016 日本)

愛知県のあるニュー・タウン(と言っても、もう何十年も前に造成された団地ですが)の片隅の一軒家に住んでいる老夫婦の日常を追ったドキュメンタリー映画。旦那はかつて団地の開発に携わってきた建築家。雑木林に囲まれて自然を大切にしながら無理をせずに生活しているちょっとお茶目な彼らの姿を見ていると、和む。

(17)フリー・ファイヤー(2016 イギリス+フランス)

登場人物全員悪(ワル)。一箇所に集まった悪い奴らがお互いドンパチやりながら、虚々実々の駆け引きをして大金をせしめようとする犯罪もの。しかしそこに悲愴感はなく、オフビートな感じのコメディ映画でもある。さて、誰が大金を手に入れるのか?

(18)マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016 アメリカ)

ある事件を起こして町の連中から疎まれ、死んだ兄の子供の面倒を見ることになった男の再生の物語。その甥っ子や好意を持った女性など、様々な他者との触れ合いと葛藤が丁寧に描かれていく。彼や周りの人間のピンと張り詰めた緊張が徐々に緩み始める展開に安心感を覚える。アカデミー主演賞を獲ったケイシー・アフレックの演技はさすが!

(19)スプリット(2016 アメリカ)

いつも予想外なことを仕掛けてくるM・ナイト・シャマラン監督の多重人格者を主役にしたサスペンス映画。女性監禁という罪を犯す主人公を演じるジェームズ・マカヴォイの見事な多重人格者振りにも唸るが、ラストにある大物俳優が登場して次作に繋がるという展開にはビックリ。またもや監督にやられた!

(20)パトリオット・デイ(2016 アメリカ)

近年起こったボストン・マラソン爆破事件を映画化した作品。爆破に至るまでのサスペンス描写や凄まじい爆破シーンも緊張ものですが、その後の警察やFBI、警備員たちの犯人逮捕までの迅速な動きには圧倒される。事件そのものは悲惨だけれども、人命救助や犯人逮捕に一致団結して協力する人たちの連帯感は素晴らしいものだと改めて感じさせてくれる。

(21)レイルロード・タイガー(2016 中国)

日本が中国を占領していた時代を舞台にしたジャッキー・チェンお得意のコミカル・アクション映画。しかし、肝心のジャッキーの動きがイマイチなのが残念。そして、戦う相手が日本軍なので、ジャッキーたちに翻弄される兵士のズッコケ振りを単純に大笑いするまでには至らなかった。

というところで、今回はここまで。次回は続きの22本目からです。

寒さもまだまだこれからが本番。風邪を引いたりインフルエンザに罹ったりしないよう、手洗いうがいを励行し、身体を温めてこの寒い冬を乗り切りましょう。特に受験生の皆さんは体調管理をしっかりとね。昨年は私の子供が大学受験だったので、私も風邪を引かないように注意していたことを思い出しました。

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