アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第47回

平成29年5月

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

新学期、新学年のスタートから一月が過ぎ、新しい生活に慣れて来た頃でしょうか。特に進学された方は、これまでとは違う学校生活に慣れたでしょうか。常に精神的リラックスを心掛けましょう。それには勿論、映画が持って来いですよね。

今回は、肩肘張らずに気軽に楽しめる作品を紹介します。と言っても、のんびりムードばかりの作品ではありませんのでご注意を。

まずは最近観た作品から『キングコング:髑髏島の巨神』(Kong : Skull Island 2017 アメリカ)を。皆さんご存知のキングコングものですよ。近年では、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで有名になったピーター・ジャクソン監督版がありましたね。この作品も、コングがいる島での探検隊の冒険がたっぷり描かれ、コング以外の怪獣や気持ち悪い巨大生物が彼らを襲って来るシーンがたっぷりあり、ハラハラさせられました。

今回の作品は、時代設定をベトナム戦争末期の70年代前半を舞台設定にし、探検隊をベトナムから引き揚げる兵隊がガードしながら、大洋にポツンと存在する未知の島“髑髏島”に進んで行きます。爆音を上げながら島へと飛行するヘリコプター編隊のシーンが、これから始まる冒険の旅の高揚感を大いに盛り上げてくれます。が、しかし、ここで早々、キングコングが現れて、ヘリコプターを次々と叩き落とし、逃げ回る者を容赦なく踏み潰していきます。コングのサイズも今までよりも一回り大きく、その迫力に圧倒されます。コングのパワーを見せつけるのに十分な出だしで、掴みはオッケーといったところです。

その後、コング以外の怪獣もウジャウジャ出て来て人間を襲ったり、コングと戦ったりします。その戦いも迫力満点で、怪獣映画ファン以外の人でも興奮すること間違いなし。そして、怪獣たちがなんだか気持ち悪くて不気味な格好をしているのも効果的で、絶対にコングを応援したくなります。コングが惚れた人間の女性を助けるという、お約束のシーンもあってニンマリです。

人間ドラマの方では、太平洋戦争の生き残り米兵が登場し、場面を攫ってしまいます。1945年の冒頭のシーンがヒントになっているのですが、彼が日本兵の持っていた刀で怪獣に立ち向かう姿には涙します。また、いつもはコミカルな感じを醸し出しているサミュエル・L・ジャクソンが、お遊びを封印してガチな軍人役を演じているのも珍しいです。今、人気上昇中のトム・ヒドルストンが傭兵役で主役だとは思うのですが、目立った活躍場面がなくて影が薄く残念でした。

今回は髑髏島だけで物語が展開しますが、次回はもしかしてコングとあのゴジラの対決が見られるかも。そんな夢のような期待を持たせて終わる脚本に乾杯です。

では、お次も最近観た作品で、『バーニング・オーシャン』(Deepwater Horizon 2016 アメリカ)です。「バーニング」と言えば、でっかいハサミを持った男バンボロがキャンプ地で若者を血祭りにあげるホラー映画かプロレスリングNOAHで小橋建太が作ったグループ名を思い出してしまいますが(←あんただけやろ!)、これは、数年前にメキシコ湾で実際に起きた海上油田掘削基地の大爆発を描いた実録ものです。海の上ですから、そんなところで爆発・火災が起こったら逃げ場なし!海に逃げるのにも命懸け。なんせ油田ですから、油のために海も燃えています。海に飛び込んで下手に顔を出したら大火傷です。

掘削した際の泥水がジワジワと浸み出して来るサスペンス描写から、配管が破裂して人間が吹き飛ばされるショック・シーン、そして油が引火して大爆発する迫力あるスペクタクル・シーンへと、久々にパニック・スペクタクル映画を観た満足感を得られました。映像も勿論凄いですが、音響が凄まじく臨場感あり、自分も事故現場にいるような錯覚を覚えます。

救命ボート上に壊れたクレーンが落ちて来ないよう、身を挺してクレーン操作に向かう人や、負傷者を優先的にボートに乗せようとする人等、こんな時でも人の命を大切にする人たちがいることに感動を覚えます。それに比べて掘削会社の上層部連中の厭らしさといったら。事故の元々の原因は、予算・期日超過を心配した彼らが、やらなければならないコンクリート・テストをやらずに済ませたことにあるのです。まさに人間の過失による人災でした。そして自分たちはちゃっかり救命ボートに乗っています。

事故発生時、遠く離れている我々にとっては、「わあ、凄い事故が起こったんやなあ。」としか思わなかったことが、こういう風に改めて映画化されると、どういう状況だったのか、原因は何だったのか、が分かると同時に、基本を怠ってはいけない、という当たり前のことに再度気付かせてくれます。そして、映画化することで企業上層部への非難を堂々と行う映画人の勇気にも心打たれます。

今回はスペクタクル映画の2本立てとなりました。特撮や音響効果も含めてまさに凄い映像がふんだんに出て来て興奮しっ放しでありますが、ただそれだけではなく、人間がきっちりと描かれているからこそ、興奮と同時に感動も味わえるし、深く考えさせられるのだと思います。DVDが発売されたら是非ご覧ください。本当は劇場で観て欲しかったんですけどね。

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