アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第46回

平成29年3月

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

入学試験の時期もそろそろ終わり、ホッと一息入れている人もいれば、結果がまだ出ていなくてイライラしている人、思うような結果が出せずガッカリしている人もいるのではないかと思います。結果を出せなかった人は、今回の経験を次の機会に活かせるよう、反省をして前進しましょう。

さて、今回は、昨年私が劇場で観た映画の感想の続きで、33作品目からになります。

33. 青空エール (2016 日本)

吹奏楽部に入部した女子高生と、野球部の男子高校生との爽やか恋物語なのかなと思っていると、ただそれだけではなく、人はお互いを励まし合い助け合うことで強く生きて行けるんだ、という力強いメッセージを持った素晴らしい作品でした。主人公二人だけの物語ではなく、他の部員たちの心の揺れや葛藤もきっちり描かれ、学園群像ものとしての面白さもあります。主役の二人が素朴な感じを出しているのも好感が持てます。

34. 後妻業の女 (2016 日本)

奥さんと死別したり別れたりした独り身の老人をたらし込んで結婚し、さっさと死なせて遺産をガッポリ手に入れる後妻業という生業をやっている怖いおばはんを主人公にしたブラック・コメディです。あな恐ろしや。おばはん役の大竹しのぶとワル仲間の結婚相談所所長役の豊川悦司との掛け合い漫才的なやりとりが可笑しいです。この調子で最後まで描いていてくれたら、もっと面白い作品になったのになあ。

35. 超高速!参勤交代リターンズ (2016 日本)

弱小藩が奇策を使って江戸への参勤交代を成し遂げる面白時代劇の第2弾です。今回は江戸から藩までの帰りの行程が描かれますが、残念ながら前作のような勢いが感じられず、ギャグもイマイチと言ったところです。チャンバラ・シーンもあり、バラエティに富んだ要素のある作品ですので、時代劇が減っている今、第3弾を作って盛り返して欲しいものです。

36. ハドソン川の奇跡 (2016 日本)

操縦不能となった旅客機をニューヨークのハドソン川に水上不時着させ、無事全員を救助した機長は一躍ヒーローとなりました。ここまでは私たちも知っている事実です。その後、その機長が、川に不時着したのは乗客を危険に晒す誤った判断ではなかったのか、近くの空港まで行けばよかったのではないか、と疑われていたなんて知りませんでした。孤独なヒーローを演じ続けてきたイーストウッド監督は、実在のヒーローの孤独な姿を冷静かつ誠実な視線をもって描いて行きます。また、事故の再現シーンの緊迫感も素晴らしいです。

37. BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント (2016 アメリカ)

巨人の国の心優しいBFGと、そこに紛れ込んでしまった少女との冒険と友情の物語です。巨人は人間の俳優をモーションキャプチャー技術で作っていますが、その技術の素晴らしいこと。映画では、どんな世界でも製作可能ですね。そして、その技術だけに頼るのではなく、ウキウキさせてハラハラさせてアハハと笑わせる楽しい映画になっています。子供のためだけに作った作品ではありません。

38. ジェイソン・ボーン (2016 アメリカ)

番外編も1作ありましたが、マット・デイモン主演のスパイ・アクション、ボーン・シリーズの第4弾です。アクション・シーンで画面描写に緊迫感を出すため、手持ちカメラを多用して臨場感のある撮影をしていますが、そのブレ加減が半端ではなく、何が起こっているのか分からないため、マットの体を張ったアクションが生かされなかったのでは、と思います。もったいない。

39. インフェルノ (2016 アメリカ)

トム・ハンクス扮するラングドン教授シリーズの大作ミステリー第3弾です。細菌兵器を使って人類を滅亡に導こうとする一派との戦いを描き、ラングドン教授が次々と謎を解いて行ってそれを阻止しようと奔走します。スケールの大きいロケ効果もいいのですが、あれよあれよと次々に謎を解明していくのに慣れてしまい、ドキドキ感が薄れてしまいました。予告編は謎めいていて面白かったのにな。

40. 金メダル男 (2016 日本)

ウッちゃんこと内村光良の監督作品です。女の子を意識するまでは何でもかんでも抜群に優秀だった男の子が、平凡な大人になった後に再起を掛けるという人生応援讃歌です。多数の俳優やお笑い芸人がゲスト出演し、ギャグ満載で作られていますが、どうもいまいちノリが悪く、大笑いできませんでした。泣き笑いを期待していた作品だけに残念でした。

41. 永い言い訳 (2016 日本)

スキー・ツアーに女友達と参加した奥さんが、ツアー・バスの事故で亡くなってしまいます。作家である夫は、冷静過ぎるほど落ち着いてその事実を受け止めますが、自分が如何に奥さんのことを知らなかったかが次々と分かって来ます。一緒に亡くなった女友達の旦那さんとは全くの違いようです。その旦那と子供との触れ合いを通じて、夫が徐々に人間らしさを取り戻していく過程が丁寧に描かれます。そして、静かな感動に包まれます。

42. ジャック・リーチャー NEVER GO BACK (2016 アメリカ)

元軍隊特殊部隊出身の賞金稼ぎジャック・リーチャーが主人公のサスペンス・アクション作。主演は勿論、前作に続いてトム・クルーズ。“ミッション・インポッシブル”シリーズのイーサン・ハントも彼の当たり役だけれど、イーサンより荒っぽくて現実感のあるリーチャー役もなかなかいいです。今回は軍隊内部の陰謀が描かれており、アメリカにおいて一つの世界を形成している軍隊の大きさを改めて感じました。

43. 湯を沸かすほどの熱い愛 (2016 日本)

町の銭湯を営んでいる肝っ玉母さんを中心に、いじめに遭っている高校生の娘、家出している浮気者の夫とその愛人の子らが織り成す、ちょっぴり変わった家族の物語です。物語が進むにつれ、ある秘密が明らかになって来る構成が見事で、久し振りに脚本の巧さに酔いました。最後にドーンと出て来るこの映画の題名には涙します。登場人物全員が愛おしく感じられ、細い身体で肝っ玉母さんを演じた宮沢りえを始め、俳優陣のアンサンブル演技にも乾杯です。あらゆる人たちに観てもらいたい作品です。

44. ブレア・ウィッチ (2016 アメリカ)

近年のPOV形式で撮った疑似ドキュメンタリー映画の先駆けであるホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の正統な続編です。前作で行方不明となった姉を追いかけて、弟と仲間たちがあの忌まわしい森に入って行く。そして今回も、彼らが撮ったビデオ映像がそのまま映画となって上映されているというスタイルです。二番煎じと思いきや、これが意外にも上手かった、いや、恐くて面白かった。前作よりも断然こっちの方がいい出来です。

45. ドント・ブリーズ (2016 アメリカ)

若者の不良グループが押し入ったゴーストタウンのある一軒家には、彼らの想像を絶する恐怖が待ち構えていた。といっても、そこにいたのは盲目のじいさん。だけれども、舐めちゃいけない。知り尽くした家で感覚を研ぎ澄まし、一人また一人と若者を血祭りにあげていくのであります。元はと言えば押し入った若者が悪いんですが、じいさんをモンスターのように描いているのがミソ。立派なホラー映画になってます。でも私は最後まで、じいさんを応援していましたよ。

結局昨年は45本の劇場鑑賞数でした。これではいかん。今年は目指せ100本とします。北海道も雪解けが進んで春が近づいて来ましたが、朝晩はまだまだ冬の寒さが残っています。寒暖の差で風邪などひかぬよう、体調管理にはご注意ください。

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