アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第38回

平成28年5月

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

今回は前回に引き続き、「新・午前十時の映画祭」から9月より上映される残り14本の作品を紹介します。先の15本は何らかの形で全て鑑賞済みだったのですが、今回は未見のものが5作品もあり、私としても非常に楽しみであります。

(16)生きる(1952日本)

♪命短し恋せよ乙女♪と歌うシーンがとても有名な黒澤明監督の名作です。退官間近の特にこれといったことをやってこなかった市役所の職員が、病気で自分の死期が迫っていることを知り、公園造りに命を傾けます。それに一生懸命になれることで生きる希望を見出すのです。夢や目標を持って生きることは幸せなことだと思います。

(17)いまを生きる(1989アメリカ)

未見作です。学校の先生と生徒たちとの交流を描いた秀作のようです。笑いと狂気そして人間臭さを醸し出す喜劇役者ロビン・ウィリアムズが先生役なので、型破りで可笑しな人物でいながらにして、ラストはジーンとさせられるのでしょうね。

(18)七人の侍(1954日本)

黒澤監督作品からもう1本。これぞ日本が世界に誇る時代劇。いや、日本映画です。日本の土着性を漂わせつつ、武士・農民と山賊との戦いをダイナミックかつ非情に描き、そこらへんの作品を蹴飛ばしてしまう迫力です。私はアメリカでリメイクされた『荒野の七人』を先に観ていて楽しんだのですが、やはり日本のオリジナル作には、心にズシンと響くものがありました。

(19)続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966イタリア)

イタリア製の西部劇。いわゆるマカロニ・ウェスタンの傑作です。マカロニと言えば、低予算でガンマンがパンパンと撃ち合うだけの映画が多いのですが、本作は南北戦争が絡んだスケールのでかい作品になっています。映像も素晴らしい。マカロニを毛嫌いしている方には特に観ていただきたい映画です。エンニオ・モリコーネの音楽も勿論GOOD!

(20)戦場のピアニスト(2002フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス)

ポーランドのユダヤ人ピアニストがナチスの迫害から逃れて生き抜く姿を追った実話の映画化です。ユダヤ人迫害のシーンは何度観ても嫌なものですが、ドイツ軍の中にも芸術を愛するが故にピアニストを救う者がいます。まさに、芸は身を助く、ですね。

(21)モンパルナスの灯(1958フランス)

未見作です。画家モディリアーニの青年期の恋を描いた作品とのこと。観光でモンパルナスに行ったことがありますが、やはり、絵を描いている人が沢山いました。芸術で有名になるのはほんの一握りの人だけなのだなと思いました。

(22)砂の器(1974日本)

松本清張の原作を映画化したスケールの大きなミステリー作品です。現在話題となっているハンセン病を扱った作品であり、いかにも日本的で閉塞的な暗い社会構造と親子の愛がテーマとなっています。ラストの交響曲の演奏シーンでは涙を禁じえません。『七人の侍』同様、日本人なら必見です。

(23)めまい(1958アメリカ)

サスペンスの神様ヒッチコック監督作品です。高所恐怖症の男性が美女の絡む事件に巻き込まれるのですが、想像通り男性はその美女に魅了され・・・。いつも紳士のジェームズ・スチュワートが、ちょっと異常なまでに美女に虜になって行くのが怖いほどです。

(24)初恋のきた道(1999中国)

未見作です。ポスターやスチール写真のチャン・ツィイーがめちゃんこ可愛い!と思いながら見逃していた映画です。時代が中国の文化大革命の頃らしいので、引き裂かれた恋になってしまうのでしょうか。

(25)山の郵便配達(1999中国)

未見作です。山の地方で郵便配達をする父とそれを引き継ぐ息子。親子の葛藤が描かれるのでしょう。その葛藤は仕事のことに対してなのか人間性に対してのことなのか。観てみましょう。

(26)アラバマ物語(1962アメリカ)

現在でも根強くはびこっている黒人への人種差別を題材にした作品です。罪に問われた黒人青年を弁護する弁護士役のグレゴリー・ペックがアメリカの良心と勇気を体現し、感動を呼びます。彼と子供とのやりとりが清涼剤的な息抜きとなって重苦しさを感じさせません。

(27)奇跡の人(1962アメリカ)

皆さんご存知ヘレン・ケラーと彼女を教育したサリヴァン先生との壮絶な戦いを描いた作品です。二人のやりとりは恐ろしいくらい真剣でまさに格闘です。教育はここまで必死にならないと出来ないのですね。それ故、最後は崇高なものとなるのです。

(28)浮雲(1955日本)

未見作です。戦時中の男と女の出会いと別れを描いたメロドラマのようです。戦後10年目の作品なので、戦時中の雰囲気も残っているのではないでしょうか。当然ながら携帯電話やパソコンが無い時代の恋愛ものは、今観るとかえって新鮮かも。

(29)愛と哀しみの果て(1985アメリカ)

『追憶』に続いて二枚目男優ロバート・レッドフォード主演のロマンスものです。共演が演技派女優メリル・ストリープ。彼女も『恋におちて』に続いてですね。舞台がアフリカのケニアというところがミソであります。

以上が今年度上映される全作品です。観に行けない場合はDVDを借りておウチで鑑賞しましょう。まさに観て損なしの名作揃いです。中でも是非劇場の大きなスクリーンと音響で観て欲しいのが『ポセイドン・アドベンチャー』、『アマデウス』、『七人の侍』、そして絶対劇場で観るべきは『続・夕陽のガンマン』です。映画は劇場で上映されるために作られたものである、ということがよく分かるはずです。

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