アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第36回

平成28年3月4日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

4月からの新しい年度を迎えるにあたり、着々と準備が出来ている人、そうでない人、これから入試に臨む人、既に試験を終え目指す所へ行くことが出来るようになった人、当初の志望とは違う所に行くことになった人、と様々でしょうが、要は次のステップで何をするかが肝心だと思います。今月を準備期間、頭の切り替え期間として、4月からの生活に備えましょう。

頭の切り替えに役立つのが勿論、映画です。先月は暗いトーンの作品を上映しましたので、今回は明るいタッチの作品を上映しましょう。

まずは『Mr.BOO! ミスター・ブー』(The Private eyes 1976 香港)。これは明るいと言うよりは、難しいことを考えずにゲラゲラ大笑いするドタバタ・コメディです。小さな探偵事務所を経営しているどケチで自己チューな主人公が、ちょっとおつむが足りないような助手やカンフー名人の見習と共に騒動を繰り広げます。追剥を得意とするギャング団との攻防もクライマックスにあるのですが、それまでの日常のドタバタ振りも出し惜しみしないナンセンスでベタなギャグの連発で笑いが止まりません。美女に見とれてプールにドボン!とか、長いソーセージをヌンチャク代わりに振り回すとか、助手たちが車を壊すとすぐに電卓を取り出して修理代を計算して給料から差っ引くとか、本人たちはいたって真面目にやっているんですが、傍から見るととにかくバカバカしくて笑っちゃう小ネタが満載なのです。約40年前に観た作品なのですが、今観てもその可笑しさは変わりませんでした。(←あんたが成長してないだけと違うか?)サービス精神満点のこの映画、気分転換にはもってこいの作品です。

主題歌もあか抜けてないけどエネルギッシュで調子のいい音楽で、頭にこびりついて離れません。歌っているのは探偵見習役のサミュエル・ホイ。当時はこの歌もヒットしました。

おバカ・トリオを演じるのはホイ三兄弟で、監督・主演の長兄マイケル・ホイは香港映画界の才人で、この作品以外にも『インベーダー作戦』や『ギャンブル大将』など、兄弟共演でドタバタ・ナンセンス・コメディを連発していますので是非そちらの方もどうぞ。そうそう、今回は今は亡き、ギャグはお任せの名声優、広川太一郎氏の吹き替えで見直しちゃったりなんかしちゃったりしたのですが、これがまたバッチグー。こんな調子で原語版を遥かに凌ぐ面白さでした。同じ観るなら吹き替え版が絶対お薦めです。

お次は『キック・アス』(Kick Ass 2010 アメリカ)。ヘタレで女の子にモテないオタク系高校生が、一念発起で街のワルどもを成敗するマスクマン・ヒーローになる、という夢を叶えるコメディです。日本でも人助けをする町の変身ヒーローがテレビで紹介されたりしていますよね。ご多分に漏れず、このキック・アスも見た目はパッとしないダサダサ・スーツで弱っちい奴なのですが、チンピラどもに食らいつく勇気だけは人一倍。ボコボコに殴られ蹴られても諦めません。その執念みたいなものには思わず心動かされます。

そのキック・アスを助けるのが、こちらもマスクマンであるビッグ・ダディとその娘ヒット・ガール。こちらは本当の闇の仕置き人。武器庫のような部屋まである、まるでバットマンとロビンみたいですが、とにかく何が痛快かと言って、娘のヒット・ガールの存在です。親父の早期教育の賜物で、まだ幼いくせして銃器やナイフの腕前は超一流。悪人どもをバッタバッタとやっつけていくシーンはエキサイティングで最高です。結構過激な描写満載ですけれどね。そして、こまっしゃくれた物言いとルックスの可愛さのアンバランスさがまたよくて、演じるクロエちゃんのファンになること請け合いです。(←あんたがロリコンなだけやろ)『(500)日のサマー』で主人公の青年の恋愛指南をする小学生役もGoodです。

映画全体としてはコメディなのですが、アクション・シーンの過激さや一部のシリアスな展開にはビックリします。そして、ヒーロー側と悪人側でそれぞれ描かれる親が子に与える影響の強さ、勇気を持って何事にも体当たりするガッツ精神が必要であることを教えてくれる作品でもあります。本作の監督が昨年の傑作『キングスマン』を送り出したのも納得です。

今回は笑って楽しめる作品を上映しました。生きていく途中で、希望が叶わないことや失敗をすることが何度もあると思います。そんな時は大笑いして嫌な思いを吹き飛ばすのが一番だと思います。「笑う門には福来る」と言うではありませんか。コメディ映画を観て、皆でワイワイ楽しみましょう。

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