アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第33回

平成27年11月01日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

今年は雪が降らないなぁと思っていたらドカンとやって来ましたね。それも60数年振りに11月の降雪記録を塗り替えるような大雪で。徐々に冬の生活に慣らそうとしていたこちらとしては、びっくりポンでした。

さて今回は前回に引き続いて、7月から9月までに劇場で観た映画の寸評を発表します。DVD化もされる頃ですし、冬休みもやって来ますので、気になる作品がありましたら是非鑑賞してください。掲載順はいつものように観た順です。

(1)ゆずり葉の頃 (邦画)

岡本喜八監督の奥様(中みね子)が初監督した老女の恋を描いた瑞々しい大人の映画。恋といっても現在の恋ではなく、若かりし頃の初恋の人に一目会いたいと願う様を綴った物語です。主演が八千草薫、共演が仲代達矢の超ベテラン・コンビ。さすが伊達に歳は取っていません。時折挟まれる美しい風景ショットやピアノの綺麗なメロディと共に、しっとりしていながらも瑞々しい作品に仕上がっています。

(2)きみはいい子 (邦画)

自分が親から受けていた虐待を娘に行ってしまう母親。父親から虐待を受けている児童がいると知りながらも何も出来ない教師。自分の子が脳障害であることに引け目を感じている母親等々の、子供と上手く距離が保てない大人たちを描いた大人にとっては痛い映画です。虐待場面もショッキング。でも、それぞれの物語が、ほんの少しの希望を持って終わる描き方がされているのが救いです。明かりが見えます。

(3)リアル鬼ごっこ (邦画)

女子高生が乗っている観光バスが、何か邪悪な力でバスごとスパッと上下に真っ二つにされる冒頭シーンにはびっくり!バスだけではなく、中にいた女子高生たちも胴体部分で二分割されているんですから!ゲゲゲッ!これは傑作ですよ、と喜んでいたら、後は訳の分からない展開になり、急ブレーキが掛かったように面白さが失速してしまいました。あれだけ冒頭で惹き付けたのに残念。

(4)ターミネーター/新起動

ターミネーター・シリーズの5作目というよりは、1・2作目を合体させた再映画化作品です。勿論、見せ場の連続です。3作目以来シュワちゃんがターミネーターとしてカムバックしているだけでも嬉しいですが、新旧のシュワ・ターミネーターが激突するのですから嬉しさ倍増。また。歳を取ったからこそ言えるユーモラスな台詞がいいです。サラ・コナーとの親子のような関係も微笑ましくてグッドです。

(5)ジュラシック・ワールド

凝りもせずに恐竜ランドを再開したばかりに、またまた蘇った恐竜たちが暴れ回ります。ストーリー的にはほぼ一作目の焼き直しですが、恐竜の出来は素晴らしく、本当に存在しているような錯覚に捕らわれます。確かに、こんな遊園地があったら行ってみたいですね。恐竜に食われる残酷度は低いですが、子守を任された助手の最期は笑っちゃうほど悲惨です。是非ご確認を。

(6)日本のいちばん長い日 (邦画)

終戦間近から昭和20年8月15日に天皇の玉音放送が流されるまで、緊迫した日々を史実に基づいて描いた映画です。かつて60年代に岡本喜八監督が映画化した同名作品ほどの熱く緊張感溢れる映画にはなっていませんが、終戦に向かう情勢がよく分かる作品になっています。そして何といっても、天皇(本木雅弘扮)を全面に出した作りが本作の肝だと言えるでしょう。

(7)ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション

このシリーズも既に5作品目。冒頭から、離陸するジェット機に素手で掴まったまま飛んじゃうという、毎度毎度ノー・スタントマンで過激なアクションを見せてくれるトム・クルーズには脱帽です。ストーリー展開もスピーディーであれよあれよの面白さ。そして、スパイ・チームの組織としての連携や連帯感が描かれているのもいいところです。スパイものシリーズ作品としては、007と双璧ですね。

(8)死霊高校

過去に学校演劇の上演中に死亡事故が起こった高校で、再び同じ劇が上演されようとしています。そして亡くなった男子高生の死霊が・・・。というお馴染みの怪談ものです。それを高校生のビデオカメラによるPOV形式で撮ったのが今風で、暗い校内で起こる惨劇が恐ろしく描かれています。ラストにもオチが用意されており、思わぬ拾い物でした。怖いけれど嬉しくなっちゃいます。

(9)パージ

アメリカで、年に一日、日頃の鬱憤を思いっ切り晴らせる日が制定されました。この日だけは何をやってもお咎め無し。そう、殺人を犯してもですよ!これにより、他の364日は平和が保たれているという皮肉。そして映画内で殺しのターゲットとなるのが防犯機器販売に従事する者の一家という皮肉。そして近所の人達から襲われる恐怖。寓話でありながら、非常に現実感があり怖いです。

(10)天空の蜂 (邦画)

自衛隊ヘリコプターを遠隔操作で乗っ取った男が、ヘリコプターを原子力発電所の真上でホバリングさせ、日本の全原発の稼働を止めないと墜落させると脅迫します。原作は東野圭吾。単純なパニック・アクションには終わらせない上で、原発問題が起こっている今現在の映画化が絶妙のタイミングだと思います。久々にスケールの大きい邦画でした。こういう映画をもっと作って欲しいですね。

(11)進撃の巨人/前篇(邦画)

私は読んだことありませんが、原作の漫画が有名な作品の実写映画化。何故か分かりませんが、人間が巨人に襲われる世界のお話です。防御壁の向こうからやって来る巨人が、素っ裸のほとんど人間に近い恰好なんだけど、とにかく不気味で気色悪くてグッド!人間を掴み上げて貪り食うシーンもグロさ満開でオッケー!こんなにゾクゾクするシーンは『寄生獣』以来かな。後篇が楽しみであります。

(12)進撃の巨人/後篇

ということで、続けて後篇を鑑賞。ああ、やはり恐れていたことが起こってしまった。最近の邦画は後篇がトホホ。あの不気味な巨人たちが出て来ないではないか!人体解剖模型みたいな巨人同士がドカスカ戦っているばかりで、ちっとも興奮しません。何故、巨人が現れたかという謎も結局謎のままだし。唯一、石原さとみのブッ飛んだ演技が引き続き楽しめたのが救いでした。

(13)カリフォルニア・ダウン

カリフォルニアを襲った大地震を描くパニック・スペクタクル巨編。とにかく地震のスペクタクル・シーンは圧巻です。やはりこういう映画は劇場で観るのがベストです。地震とは関係ありませんが、開巻早々の自動車事故による崖での救出劇からハラハラドキドキで一気に映画世界へGO!主人公の災害救助隊員が、自分の家族を最優先で捜索するのはちょっとなあ、と思いますが。

(14)心が叫びたがってるんだ。 (邦画)

久々に観るアニメです。小学生の時に自分のおしゃべりで親が離婚したと思い込み、喋ることを封印した女子高生を中心に、学校演劇でミュージカルを上演することになった高校生たちの姿が綴られて行きます。普通の高校生たちの心の機微を捉えた脚本、実写風の背景作画、感動的なミュージカル音楽、等々、胸が締め付けられ、そして暖かな気持ちになる、心に残る作品です。声優の力も凄い!

前回分と合わせて45本。いつもながらのことですが、勉強合間のリフレッシュ・タイムにおひとついかが?皆さんの心に残る映画が少なくとも1本はあるはずです。次回は10月から12月分までの映画です。さあ、映画鑑賞に追い込みを駆けるぞ。皆さんはお勉強にね!

コラム一覧へ戻る

▲ページ上部へ戻る