アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第31回

平成27年6月10日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

学生の皆さんはそれぞれの目標=大きな山に向かって毎日勉強に励んでいますよね。山は単純に上まで登らせてはくれません。いろいろな障害が途中で待ち構えています。そこで今回は皆さんの登頂成功を願いつつも、気を緩めてはいけないよというメッセージを込めて、山を舞台にした映画を取り上げます。この映画館ですから、単純な登山映画ではないことはお分かりですよね。(←ただ単に、あんたが好きな映画だということでしょ)

まずはドカンと一発『クリフハンガー』(Cliffhanger 1993 米+仏)。かつて登山仲間を助けられなかったという心に傷を持つ男が、大金を積んで雪山に墜落した飛行機を追って来たギャング団と激闘する、まさにハラハラドキドキのクリフハンガー状態が続く連続大活劇です。相棒は女性登山家唯一人という中、アクション番長スタローンが実際に岩壁をよじ登り、雪原を走り回り、殴り合いをし、雪に埋もれ、身体を張ったアクションで本領発揮の大活躍です。そんな薄着で寒さに耐えられるの?という思いが一瞬頭をよぎりますが、開巻のロープ一本の宙吊りシーンから最後のヘリコプター登場シーンまで、とにかくサスペンス・アクションのつるべ打ちで、『ダイ・ハード2』のレニー・ハーリン監督の力技が冴える傑作です。山岳アクションに相応しいトレバー・ジョーンズの雄大な音楽も必聴です。

次は『影なき男』(Shoot To Kill 1987 アメリカ)というアクション映画の佳作です。登山ツアー客に紛れ込んだ殺人強盗犯を刑事と山岳ガイドのコンビが追いかけます。刑事は登山に関しては素人で、ハアハアいいながら犯人を追いかける姿はユーモラスでもあります。犯人は途中で同行者たちを滑落させるなど凶悪な奴です。山を舞台にした映画と言っておきながら、実はこの作品、山を下りてからも追跡劇が続き、最後の最後まで楽しませてくれます。最初はぎこちなかった刑事とガイドのコンビもいい関係になって来て、凶悪犯が出て来る映画ではありますが基調は明るく、鑑賞後は爽やかに感じること請け合いです。監督のロジャー・スポティスウッドの作品では、『アンダー・ファイア』や『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』がオススメです。

お次はスパイものを絡めたクリント・イーストウッド監督・主演作『アイガー・サンクション』(The Eiger Sanction 1975 アメリカ)です。アイガー北壁登頂を目指すグループに二重スパイがいるので、事故を装ってそいつを抹殺せよ、というミッションを与えられたCIA諜報員が主人公のサスペンスものです。雄大なグランド・キャニオンでの登山訓練をする明るいムードから、雪に覆われたアイガー北壁での危険な登山と誰が裏切り者なのか分からないという緊張感をはらんだムードへと切り替わる展開を見せます。スパイものだけあってストーリーもちょっとひねったものであり、ラストも味わい深い印象を残します。それを大いに手助けしているのがジョン・ウィリアムズによるリリカルでヨーロピアン・ムード漂わせる流麗な音楽です。『スター・ウォーズ』以降の壮大なシンフォニック音楽も素晴らしいけれど、それ以前の大作ではない映画で耳にした流麗な音楽もまたいいですよ。『ジェーン・エア』や『シンデレラ・リバティー』など。

最後は皆様お待ちかね(←誰がやねん!)、やっぱりここに落ち着くのかというサスペンス・ホラー『デッドクリフ』(Vertige 2009 フランス)。元カレが加わったりと、ちょっと複雑な関係の若者グループがクロアチアへ登山に行くのですが、登山道が何故か塞がれていたために横の岩壁を伝って向こう側を目指します。しかしそれが運の尽き。仲間の一人がまさかの仕掛け罠に引っ掛かり、何者かに連れ去られてしまいます。そしてまた一人、また一人とやられていくのでした。山の主のような殺人鬼が登場するのですが、実はこの映画、その殺人鬼が現れてから緊張感が緩んでしまいガッカリなのです。しかし、姿を見せるまでの山登りの緊張感たるや半端なく素晴らしいのです。岩壁を足を滑らせそうになりながら進むシーンや吊り橋が崩れ出すシーンなど、本当にヒヤヒヤものです。不穏な人物関係もサスペンスを盛り上げるのに効果的でした。途中までは傑作だと思っていたのに残念!それを皆さんの目で確かめてみてください。

山はただ単に上るだけでも大変なのに、ギャングや凶悪犯や二重スパイや殺人鬼が出て来るとますます大変です。でも、今回の映画たちが危険を顧みず本物の登山シーンを見せてくれて我々の心を掴んだように、皆さんも自分の足で目指す山を一歩一歩登って行ってください。そうすれば山の神様の心を掴むことが出来るでしょう。(←いつもながらのこじつけやなあ)
Let’s Climb To The Top Of That Mountain.

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