アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第30回

平成27年5月10日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

このスポポン映画館も今回で30回目を迎えることが出来ました。私の稚拙な文章を国語塾のようなところに載せてよいのだろうかと自問しつつ、毎回書かせていただいております。読まれている皆様の反応がどのようなものなのか、こちらでは分からないのが少し心配なところではございます。中には、こんな無駄な読み物は載せなくて結構という意見もあるかとは思いますが、皆様からのご感想などを聞かせていただければ幸いでございます。ご意見は塾長までお願いいたします。

と、少しへりくだった言い方で始まりましたが、今回もいつもの調子で楽しい映画をご紹介していきますね。

先日『メイズ・ランナー』(The Maze Runner 2014 アメリカ)を観ました。主人公の青年が目を覚ますと、そこは巨大迷路に囲まれた広場で、何十人もの若者たちがそこへ集められていたのでした。誰が、何故、何の目的で若者たちをそのような状態にしたのかが全く分からない状況で、観ているこちらも、いったいどうなってんねん?と謎、なぞ、ナゾだらけで不安になります。しかも長い人は、そこに3年も住んでいるというのですから。

設定自体はスケール感のデカい『CUBE』ですね。映画はその不思議な世界からの脱出をスピード感たっぷりにハラハラさせながら見せます。迷路といっても高さが30メートルはあろうかという壁です。その壁が轟音地響きを立てながら動き出すスペクタクル感。迷路の中で蠢いている蜘蛛と蠍を合わせたような不気味な生物が襲って来る恐怖感がたまりません。誰が最後まで生き残れるのか?迷路を抜けると何が待っているのか?皆でキャーキャー言いながら観るイベント・ムービーにはもってこいの作品です。

でも、あれよあれよと観ているだけではなく、この映画では、閉塞された世界での考え方による対立や仲間割れ(『蠅の王』ではより残酷に描かれています)、と自分の身を挺してでも仲間を守る友情が描かれており、ドラマチックな見応えがあります。実はこの映画の原作には物語の続きがあって、映画もあと2本続編が作られるようです。今度は迷路ではなく他の世界からの脱出劇のようですが、とにかく早く観たい!

『メイズ・ランナー』は3本の予定ですが、最近、特に邦画では前後編2部作の形で公開する映画が増えました。『寄生獣』や『ソロモンの偽証』、少し前では『GANTZ』などです。『寄生獣』『GANTZ』はショッキングで奇妙で不気味な世界観にゾクゾクし、『ソロモンの偽証』は中学生たちの人間関係やその思いに胸を締め付けられ、後編に大きな期待を持たせてくれました。しかし・・・なんですね。既に観慣れた世界観なので全編と同じようなことをやっていても新鮮味が無いし、謎を収束させるために悪い人は結局いませんでしたではやはり面白みが無いんですね。いっそのこと少し上映時間は長くなっても1本立てでやって欲しかったです。

物語が途中で終わってしまうような本当の続き物が楽しめるのは、映画よりもテレビの方がいいのかもしれません。ここでは番外編ということで、テレビのミニ・シリーズから1作品を取り上げます。

『ジェネレーション・ウォー』(Unsere Mutter 2013 ドイツ)。これは日本では珍しいドイツ製の全3話ミニ・シリーズ作品です。

仲良し5人組の男女が戦争に翻弄される姿を第二次世界大戦前夜からドイツ降伏の終戦時に亘って描いた大作です。兵士となってソ連軍と戦う兄弟、その兄を想いながら看護婦となって野戦病院で働く女性、ユダヤ人であるために強制収容所行きから逃れてレジスタンス軍に参加する男性、その男性を救うためにナチス将校に取り入られ歌手となる女性。それぞれが背負う過酷な運命に胸が締め付けられます。彼らがどうなるのか心配で4時間30分を一気に観てしまいました。

戦場での激しい戦いや残酷さがきっちり描かれているのは当然だし、我々もそういうものなんだろうなとは理解しているつもりですが、レジスタンスの中にもユダヤ人迫害には賛成しているグループがあったり、医師・看護婦といえども敵側であれば殺されたり暴行されたりと、混沌とした世界で常に緊張を強いられた状態が恒常化しているのが戦争ではないでしょうか。銃後においても、ナチス将校の一言で監獄に送り込まれてしまう恐怖が常にあったと思います。

サスペンス、スペクタクル、ロマンスを盛り込んだ緊張感溢れる娯楽作品であると同時に、当然のことながら、戦争はダメだよね、ということを強く重く感じさせてくれ、個人の状況を描きながらその時代、歴史を見事に浮かび上がらせています。日本と同じく敗戦国が製作している点も特に我々に共感を呼ぶのだと思います。ドイツの戦争映画では、『橋』『Uボート』『スターリングラード』がおすすめです。

最後に5人で集まったあの酒場で、また5人で再会して欲しかったなあ・・・。

今回は題材も作風も全く違う2本立てでしたが、サバイバルという点では共通しているのではないでしょうか。何はともあれ、まずは生きることが大切なのですから。(←なんかこじつけやなあ)どんな状況に陥っても希望を失わず、前を見て進みましょう。勿論、そのための努力は必要ですけどね。(←自分に言い聞かせとるんやな)

コラム一覧へ戻る

▲ページ上部へ戻る