アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第22回

平成26年8月10日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

暑い暑い夏がやって来ました。涼しくなるには昔からこれ!そう、怪談ですよね。怖くてゾッとして背筋が凍る。でも、冷や汗タラタラなんですけどね。当映画館でも皆さんに涼しくなっていただこうと怪談オールナイト上映の始まりです。

先ずは最近のPOV(Point Of View)撮影ブームを起こした『パラノーマル・アクティビティ』(Paranormal Activity 2007 アメリカ)からいきましょう。主人公カップルの家庭用ビデオカメラの映像のみで成り立っている映画です。

深夜、家の様子が何か変だということで、2階の寝室にビデオカメラを固定して夜中撮影を続けているうちに、ある夜の映像に寝室の扉がスーッと勝手に開くのが映っていました。風かなんかかもしれないねと言っているうちにまた別の夜の映像に、寝室の中に向かって来るミシミシという足音とともに、白い足跡が付いているのが見えました。さらに別の夜には、彼女が深夜ベッドからむっくり起き上がり、立ったまま2~3時間、彼が寝ているのをジッと見つめている姿が映っていました。さらにはびっくりして飛び起きるほど階下からドンドンガラガラと大きな物音がしたりして、この家が尋常ならざる家であることが分かってきます。しかし、その正体は・・・。

最初は退屈なホームビデオの映像で、こりゃ失敗作かなあと油断していたんですが、ジワジワと怖さが伝わってきて、ラストにはまさに衝撃の恐怖!劇場の皆がキャー!!やられたあ!

作品はその後シリーズ化されていますが、やはり1作目が何と言っても怖いです。お化け屋敷もののバリエーションとして実にうまく出来ています。

お次は『パラノーマル・アクティビティ』のヒットを受けて日本で製作した『パラノーマル・アクティビティ第2章 /TOKYO NIGHT』(2010 日本)です。これは姉弟が住むことになった家を舞台にした、本家と全く同じ家庭用ビデオカメラの映像で成り立った作品です。一部、クライマックスには別のビデオカメラ映像も多用されていますけれどね。

本家同様、日常の何気ない異変が次々にカメラに収められていき、怖い緊張感がジワジワと忍び寄って来ます。そこに日本の風土独特の陰湿な感触が合わさって、まさに怪談と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっています。柳の下のどじょうを狙ったどうせ二番煎じの映画だろうとあまり期待をしていなかったのですが、ところがどっこい、本家よりねちっこさがあって、私としてはこちらの方がゾッとしました。レイトショーで観たので帰り道とても怖かったです。ラストが屋外に飛び出る展開になるものですから。

POV撮影作品をもう1本挙げると『REC/レック』ですが、これは血がドバドバ阿鼻叫喚のホラー映画なので題名だけに止めておきます。今回は“怪談”ですからね。先の2本は決して血が飛び散るような映画ではないのでご安心を。次の映画もそうです。

ここでPOVから離れて『チェンジリング』(The Changeling 1979 カナダ)を上映します。クリント・イーストウッド監督、アンジェリーナ・ジョリー主演の作品ではないのでお間違いなく。

妻と子供を失った作曲家が古い屋敷に住むことになり、そこで子供の幽霊が出て来るなど、いろいろな怪異現象を体験するという、これまたいわゆるお化け屋敷映画なんですが、ショック演出ではなく、森閑とした静かなタッチで怪異現象が描かれていき、まさに怪談と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっています。幽霊の正体を突き止めようとするミステリー・タッチも加わり、ただ怖いだけではなく、女の子の幽霊の悲しみが伝わって来て、観た後、とても心に残るものがあります。怪談なんてきらいだという人に是非見て欲しい作品です。

子供の幽霊が出て来る映画では悲しみを背負った事情が多く、『仄暗い水の底から』『エクトプラズム』などもそうでしたね。

ミステリー・タッチの怪談ということでは、大スター共演の『ホワット・ライズ・ビニース』(What Lies Beneath 2000 アメリカ)が面白いです。原題をカタカナに変えただけのこの邦題には怒りを感じますが、映画は非常によく出来た怪談ものです。

ミシェール・ファイファー扮する奥さんが自宅で怪異現象に見舞われるのですが、ヒッチコック映画よろしくミステリー・タッチで展開し、ドンデン返しに次ぐドンデン返しのクライマックスへとなだれ込んで行きます。バスタブや池などの水が非常に印象に残る映画でもあります。夫にはハリソン・フォードが扮し、配役の妙も楽しめますぞ。

最後にお盆にふさわしく、『異人たちとの夏』(1988 日本)をどうぞ。

主人公の男の前に死んだ両親が現れます。自分が生まれる前の年恰好の両親なのですが、勿論、自分のことを息子として扱ってくれます。嬉しいですよね。なんだか夢見心地でノスタルジックでとてもいいムードです。監督が大林宣彦なので、詩情溢れたそこらへんの描き方はツボを心得たもんです。一緒にすき焼きを食べるシーンなんて涙がこぼれます。

でも、それだけでは終わりませんよ。ラスト近くには見事怪談映画となってゾーッとさせてくれます。ノスタルジックな味わいとホラーの味わいがうまく噛み合って心に残る作品となっています。

今回は日本の夏にふさわしく怪談映画を特集しました。やはりお盆の時期にはスプラッター・ホラーではなく、怪談がお似合いですね。(←別に怖い映画でなくても、『黄泉がえり』とか『いま、会いにゆきます』、『ゴースト/ニューヨークの幻』とかでもええんとちゃうの!!)

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