アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第18回

平成26年3月14日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

皆さんにどんな映画を紹介しようかと悩んでいるうちに、私の左目まぶた辺りが腫れてきて、喧嘩でもして殴られたのではないかと家族に思われてしまいました。目もなんだか見え辛く、このまま失明してしまうのではないかと心配しましたが、なんとか回復してきたみたいです。少しホッとしました。目が見えなければ映画も観られませんからね。

ということで、今回は人間の目が見えなくなってしまう怖い映画を特集上映しましょう。

まずは『ブラインドネス』(Blindness 2008 ブラジル+カナダ+日本)からです。

何が原因なのかはハッキリ分からないのですが、ウィルスに感染していくように人々が次々と失明していきます。この映画の主人公たちはまだ目の見える人々を中心にグループを作って生活するのですが、一人また一人と失明し、遂には全員が盲目になるという恐ろしい展開になってしまいます。

人間はどんな状況でも生きようとする本能が働き、それはそれで逞しくていいのですが、苦しく絶望的な状況ではまた別の嫌な本能も剥き出しになってきます。目が見えない者同士でも王様と奴隷の関係のように身勝手に相手を服従させる者が現れてくるのです。

危機的状況の中、どうして助け合うことが出来ないのか。非常に悲しくなってしまいます。人類滅亡の時、あなたは理性ある行動が出来るのか、自暴自棄になって本能剥き出しになるのかを問われているようです。

しかし、映画は希望の光が見え始めて終わりを告げます。ああ、よかったあと思わずにいられません。

次は『人類SOS』(The Day Of The Triffids 1962 イギリス)です。これは原作が有名なSF小説「トリフィドの日」の映画化です。

ある夜、流星群が大量にやって来て、あたかも天体ショーのようでした。人々はその天体ショーを楽しんで寝床に就きました。そして翌日目覚めると、なんと目が見えなくなっていたのでした!一斉に多くの人々が失明する恐怖を描いているのですが、これだけでは問屋は卸しませんよ。

なんとなんと、流星群に紛れて宇宙から肉食植物トリフィドが多数飛来していたのです。人間にとってはダブル・パンチを食らわされたようなもので、次々とトリフィドの餌食になってしまいます。

急に目が見えなくなると、人間は肉食植物に対して何も出来ず、ただ逃げ惑うばかりです。映画では、たまたま夜空を見ていなかった主人公たちを中心に人類の危機を乗り越えて行く姿が描かれます。そして遂にトリフィドの弱点・苦手とするものが分かるのですが、それは観てのお楽しみ。

何も特別なものではないのですよ。地球に生まれてよかったなあ。ちょっと古い映画でトリフィドの造形にもチープさが漂っていますが、愛すべき作品です。再映画化すればいいなと思います。『ワールド・ウォーZ』なんかよりよっぽど面白くなりそう。

最後は『パーフェクト・センス』(Perfect Sense 2011 イギリス)です。

この映画も『ブラインドネス』のようにハッキリした原因は分からないのですが、皆が次々と失明してしまいます。ただもっと恐ろしいことになるのです。最初は人々の嗅覚が無くなり、次に味覚が無くなり、そして聴覚が無くなっていくのです。

ここまでだと、それらの感覚を失ってもなんとかやって行こうと皆が明るく振る舞うことも出来たのですが、次には触覚も奪われてしまいます。人との肌の触れ合いや吐息の感覚も無くなるのですよ。ここまで来ると絶望ですね。ところが更に追い打ちを掛けるように、遂には視覚さえも無くなってしまいます。まさに奈落の底に落とされたような感覚ではないでしょうか。

このように非常に怖く恐ろしい映画なのですが、恋人同士を主人公にストーリーが展開され、それ以上に深い悲しみが胸を突き刺して来ました。静かで透明感あるタッチで描かれたとても辛い作品です。二人の最後の抱擁には涙を禁じえません。是非あなたの五感でこの作品を確かめてください。

いやあ、こうやって観て行くと、やはり目が見えなくなるのは当たり前ですが大変なことですね。目が不自由な方が何気に生活されているのを見ると、それだけでも頭が下がります。ましてやヘレン・ケラーさんのような方は!『奇跡の人』よかったですねえ。えっ、まだ観ていないですって?是非ご覧ください!

今回は珍しく、いつも途中で茶々を入れる関西弁のアイツが来なかったですね。題材が怖過ぎて出て来られなかったのでしょう。失明して映画が観られなくなると大変ですからね。皆さんも今のうちに大いに映画を観ておきましょう。もしかすると、ある朝目が覚めたら...。

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