アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第17回

平成26年2月15日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

受験生の皆さんは宴たけなわで気が立っている時かもしれませんが、このコラムを読んで、少しはリフレッシュしようではありませんか。(←勿論他のコラムもですよ、と言うとかんかいな)

前回は私が昨年、映画館で観た洋画のベスト5を紹介しましたので、今回は邦画のベスト5を紹介しましょう。例によってアイウエオ順です。(←順位づけ出来ない優柔不断な奴やなあ)

『遺体 明日への十日間』(2012)

あの東日本大震災で被害を被った岩手県釜石市の遺体安置所を舞台にしたノンフィクションを基にした作品です。安置所といっても学校の体育館で、そこにずらーっと並べられた遺体を見ているだけで胸が苦しくなります。様々な人たちが自分の親兄弟、親類の遺体を探しにそこへやって来、ある人は対面出来、ある人は叶わないのですが、その何百という遺体を死体としてではなく、尊厳ある人間として扱う行政やボランティアの人たちの行動、思いやりに頭が下がります。こういう方々がいて、どれだけの人たちが心を救われたことでしょう。こういう方々にスポットを当てた作品ということでも、この映画の意義があると思います。

『凶悪』(2013)

実際にあった事件を基にした怖い作品です。人間はかくも凶悪になってしまうのかと、嫌な気分になってしまう強烈な映画です。保険金を掛けて人を殺す、ということを悪びれることもなくやってのける連中に憤りを感じるとともに、ゾッと背筋が寒くなってしまいます。ふざけて笑いながら老人をなぶり殺しにするシーンは正視に耐えません。また、この事件を追う新聞記者も事件にのめり込んでしまい、他が見えなくなって自己中心的な嫌な奴に見えてきます。実行犯役のピエール瀧、首謀者役のリリー・フランキーがとにかく怖い。他の作品でいい人役を演じていても、急に凶悪な奴に変身するんじゃなかろうかと思ってしまいます。

『許されざる者』(2013)

クリント・イーストウッドが監督・主演をしてアカデミー作品賞を獲った西部劇の日本版リメイクです。今、イーストウッドに対抗できる役者はこの人しかいないだろうということで、主人公は渡辺謙が演じています。舞台は明治開拓時代の北海道!やはり日本で西部劇撮るなら北海道ですわね。剣劇シーンは非常に緊張感たっぷりに描かれており、日本人の血が騒ぐのか、オリジナル作品の拳銃よりも刀の方が観ているこちらにも力が入ります。そして、人を殺めることの虚しさ、恐ろしさがよく表れています。また、ロケ撮影も素晴らしいです。さすが北海道。

『横道世之介』(2012)

題名だけ聞くと侍ものの時代劇かなと思ってしまいますが、れっきとした現代劇です。と言っても、80年代が主な時代背景ですけれどもね。田舎から都会に出て来たお人好しの大学生、世之介君のゆるーいエピソードの数々を十数年後の現在と絡めながら描いていきます。とにかくいい奴なんですよね、世之介君。こんな友達がいればいいなと誰もが思うはずです。コミカルなエピソードを散りばめながらも、最後は胸が詰まる展開になります。でも、世之介君らしいなあと納得してしまうでしょう。最後まで、ほんとにいいほんわかムードを持った映画です。

『藁の楯』(2013)

これは以前に少し紹介したことがある作品ですが、改めての登場です。孫を人間のクズのような男に殺された富豪が、警察に逮捕されていようがその犯人を殺した者に何億という大金を払う、と言ったからさあ大変。護送中のその犯人を狙って次々と賞金稼ぎが襲って来ます。護衛官たちと賞金稼ぎの連中との戦いがハラハラドキドキの連続です。警察の中にも襲って来る奴がいるし、護衛仲間も信用できるかどうか怪しいという強烈サスペンスの連続です。また、卑劣な犯人を守らなければならないのか、という葛藤もあり、考えさせられることもあります。とにかく緊迫した異様なムード漂う映画です。

邦画は17本観た中からの5本を紹介しましたが、どれも素晴らしい作品ですので是非観て下さい。最近はビデオ(おっと、DVDですね)になるのが早くなりましたからね。本当は映画館で観るのが一番なんですけどね。今年も面白そうな映画が続々公開!たまには劇場に足を運びましょう。

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