アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第12回

平成25年9月20日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

なんと、この映画館も開館以来1年が経とうとしています。これも読者の皆様のお蔭であり、好き勝手な文章をそのまま載せていただいている心の広いオーナーのお蔭であります。皆様に感謝、感謝。

私は、映画はジャンルを問わず何でも好きであり、そのうちの一つとしてホラー映画も好きなのですが(←そのうちの一つ?特に好きなんやろ!)、当映画館で血がドバドバのスプラッター映画を上映するとオーナーから即上映禁止令が出てしまいますので、今回は血や肉が飛び散ること無く、皆さんがしかめ面をしなくて済み、いろんな意味で楽しめるホラー映画を調子に乗って上映します。(←なんや、冒頭の文章はこのためのおべっか文かいな)

1本目は、ある家の中で起こる怪異現象を大掛かりなスペクタクル映像で見せてくれる派手な作品『ポルターガイスト』(Poltergeist 1982 アメリカ)です。

新興住宅地に建てられた家に何故かはびこる悪霊の恐怖を描いた作品で、前半は家具が移動していたり、ピエロの人形が動いたり、女の子が霊界に連れて行かれたりとジワジワ恐怖を盛り上げていき、後半は悪霊との対決を盛り込んだスペクタクル映像で押しまくり。監督が『悪魔のいけにえ』で延々チェーンソー男が追っかけて来る恐怖を描いたトビー・フーパーだけに、後半のたたみかけるようなショック・シーンは圧巻です。最後にはなんとまあ、家まるごとぶっ潰してしまうんですから。

でも、ホラー映画が苦手な方も心配御無用。悪霊にさらわれた小さな娘を助け出そうとする家族(特に母親)の愛がしっかり描かれ、観終わった後は家族の絆の強さを感じさせていい気分になるファミリー・ムービーになっているのです。製作がスティーブン・スピルバーグなのでそれも納得の展開ですね。お茶目な霊媒師の登場など、ユーモラスなシーンも結構ありますので、敬遠せず是非ご覧ください。

よく似た設定で最近の作品に『インシディアス』がありますが、これは結構怖いので、まずは『ポルターガイスト』からどうぞ。ここからホラーへの道が開けるかもしれませんよ。(←大きなお世話じゃ)

また、テレビが霊界との出入り口になっている設定も面白く、ラスト・シーンには思わずニヤリ。貞子さんもこの映画を観て、テレビからやって来るようになったのではないでしょうか。映画館のスクリーンから悪霊が飛び出して来る『デモンズ』という映画もあるなあ。(←これは残酷描写があるやつやないか!)

次は、どことなく懐かしい感じがするちょっと昔の時代の田舎町が舞台で、双子の少年を主人公にした全く血も流れずスペクタクル映像も無いたいへん地味な作品『悪を呼ぶ少年』(The Other 1972 アメリカ)です。

双子の一人はいい子なのですが、もう一人が邪悪な心を持った少年で、その邪悪さがだんだんエスカレートして、近所の嫌味な婆さんを心臓麻痺でショック死させたり、気に食わない従兄を事故に見せかけたりして殺しているようなのです。いい子の方は何とかもう一人のその行いをやめさせようとするのですが…、というストーリーです。人を殺しても何とも思わない邪悪な子供が無邪気な顔をしている分余計に怖く、殺人の直接描写が無い分余計に想像力を掻き立てられてゾッとします。映像が素晴らしく、静かな田舎の美しい風景が邪悪さとのギャップを生んでこれも効果大です。ジェリー・ゴールドスミス(←この人、よくこのコラムに登場するなあ。そうだ、『ポルターガイスト』もこの人の担当や)の少し哀しげで美しく澄んだ音楽もこの作品に非常に合っています。

その後、物語は予想しなかったショックを受ける展開へ。ウーン、とにかくやられた。こんなにショックを受ける映画は滅多にありません。ここで書いてしまうとネタバレになってしまいますので書けませんが、是非その目で確かめてください。ある物を…。そしてその夜は悪夢にうなされてください。かつて私がそうであったように。

あっ、こんなことを書いてしまうと観るのを敬遠される方がいるかもしれませんが、美しさの裏側には残酷なものが潜んでいるということを知るためにも是非ご覧ください。恐ろしいと同時に非常に切ない映画でもあるのです。

原作は元俳優だったトマス・トライオンで、原作も勿論素晴らしいです。そして彼の二作目『悪魔の収穫祭』も怖くてストーリーテリングの妙には感心します。これも必読。こちらは映画ではなくテレビ・ムービーになりましたが、原作の雰囲気がよく出ている秀作でした。

今回は堂々とホラー映画を二本立て上映しましたが、一口にホラー映画といっても今回の作品のように様々なジャンル、要素がありますので、毛嫌いすることなく、私が推薦する作品を鑑賞しましょう。(←大きなお節介じゃ!)

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