アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第11回

平成25年8月15日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

夏だ夏だ!暑い暑い!海へ行こう!!ということで、北海道にいると場所によってはあまりピンと来ない人がいるかもしれませんが、やはり夏と言えば“海”または“プール”(勿論、屋外ですよ)ですね。学生の皆さんも勉強ばかりでは疲れますので、水を浴びてリフレッシュしましょう。その後は身体を休めるために映画を観ましょう。そして気分良くなったところで眠りにつきましょう。ありゃりゃ、勉強する時間が無くなってしまいました。

そうなってはいけませんので、今回は海に行かずともその気分が味わえる映画をどどっと特集上映します。

海を舞台にした映画で私がすぐに思い浮かぶのが言わずと知れた『ジョーズ』(Jaws 1975 アメリカ)。この映画を観ていない人でもジョン・ウィリアムズ作曲のあの有名な音楽は知っていますよね。前半はスリラー、後半はアドベンチャーへと、映画のいろんな要素がたっぷり詰まったまさに傑作。クライマックスの鮫と人間の死闘には燃えます。とにかく観て下さい。ちなみに、Jawsは“鮫”ではないことは皆知っているよね。

『ジョーズ』の鮫といい勝負するのが『ディープ・ブルー』(Deep Blue Sea 1999 アメリカ)の鮫。ドキュメンタリー映画の『ディープ・ブルー』とお間違いなきように。こちらは研究で高等知能を付けられた鮫が海に浮かぶ研究所内で大暴れ。『ジョーズ』の二番煎じかと思っていたら、ヘリコプターまで破壊してしまう知能と体力を持ったド迫力の強さの鮫の登場で、限られた空間での鮫と人間の戦いがドキドキハラハラの連続です。さすが、『ダイ・ハード2』や『クリフハンガー』のレニー・ハーリン監督作。

海での限られた空間と言えば船を舞台にした映画ということで『タイタニック』、ではなく、『ポセイドン・アドベンチャー』(The Poseidon Adventure 1972 アメリカ)。巨大津波でひっくり返り天井と床が逆さまになった船内からの脱出劇を単なる冒険ものではなく、登場人物のキャラクターを見事に描いて人間味溢れる感動作に仕上げています。太っちょおばさんや神父の勇気ある行動に涙。ただ脱出過程をサスペンスだけで描いたのではここまでの感動は得られません。リメイク版の『ポセイドン』が作られましたが、出来は雲泥の差です。

そして船内に閉じ込められると言えば潜水艦でしょう。元々が密閉された場所ですからね。ということで『U・ボート』(Das Boot 1981 西ドイツ)。潜水艦映画は数あれど、これほど息が詰まる映画はありません。とにかく狭い潜水艦内の描写がリアルで、最初は意気揚々としていた乗組員たちが敵船との戦いで海中に追いやられ、だんだんと死の恐怖にさらされていく過程が克明に描かれます。外に飛び出して逃げるわけにはいかないですからね。潜水艦勤務はしたくないなあと思ってしまいます。そして、ラストの虚しさも心に突き刺さります。

邦画では『出口のない海』(2006 日本)があります。これは海の特攻隊と言われた人間魚雷“回天”の乗組員たちの物語です。潜水艇とは名ばかりの前進しかできないちっぽけな乗り物に爆弾と共に一人乗り込み、敵船に突っ込んで行くのです。まさに人間魚雷。無茶苦茶です。その多くは敵船に当たることもなく、コースを逸れて海底に突っ込んだり海中を漂流したりして乗組員は船内で亡くなったそうです。青春真っ最中の若い人たちの命が無駄に失われてしまったのです。映画でもそれらが詳しく描かれていきます。終戦の月に観ておくべき作品です。

海を舞台にした若者の青春と言えば『ビッグ・ウェンズデー』(Big Wednesday 1978 アメリカ)がいいですね。いつか水曜日にやって来る幻の大波“ビッグ・ウェンズデー”に乗ることを夢見ているサーフィン大好き若者三人の友情物語で、これも戦争(ベトナム戦争)の影が彼らを覆って来ます。きれいな海、迫力あるサーフィン・シーン、そして切ない友情物語。ついにやって来たビッグ・ウェンズデーに向かう彼らの姿が感動的です。

若者たちだけじゃなくて夢見るおじさんたちも青春真っ只中だあ!『冒険者たち』(Les Aventuriers 1967 フランス)は夢破れた男二人女一人の三人が海底に眠る沈没船の財宝を手に入れ、そしてギャングたちに絡まれて....、という何だか題名も含めてアクション・アドベンチャー映画のように聞こえる物語ですが、宝探しに行く楽しい船上、悲しくも美しい水中埋葬、切ない幕切れの場となる海に囲まれた城塞島など、海を背景にしたシーンが印象的で、とにかく心に残る切なく美しい映画です。アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、そして愛しのレティシア役のジョアンナ・シムカス。みんな輝いています。フランソワ・ド・ルーベの音楽も心に沁みます。

あとは水中ゾンビが初めて登場する『サンゲリア』や巨大なタコのような気色悪い触手怪物が客船を襲う『ザ・グリード』、恨み晴らさでおくべきかと海の霧の中から現れる怨霊『ザ・フォッグ』などなど、海に関係する好きな作品がありますが、違う方向に行ってしまいそうなので、『冒険者たち』の美しい余韻に浸りながらこの辺で夏のオールナイト上映を終了します。

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