アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第10回

平成25年7月15日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

最近公開されたトム・クルーズ主演のSF映画『オブリビオン』は単純なアクションものではなく、不思議な味わいのある作品でしたね。出だしはディズニー・アニメ『ウォーリー』みたいだし、地球上で人間がたった二人しかいないなんて、どんな感覚になるのかなあ。(←一緒にいる相手によるわな。当然、あんたは奥さんを選ぶやろな!(?))

『オブリビオン』とは全くタイプの違う作品なんですが、何故か思い出した映画がありますので、今回はそれらを上映しましょう。いずれの作品も陰謀、騙しがテーマの一つとして扱われていることが共通していることでしょうか。

1本目は『ソイレント・グリーン』(Soylent Green 1973 アメリカ)。人口が増加し続け、食糧の入手も困難になっている近未来。大気汚染などの影響で、現在我々が普通に食べている野菜や果物なんて一般庶民には高嶺の花。一部の富裕層しか食べられません。じゃあ、皆は何を食べているかというと、“ソイレント・グリーン”と呼ばれる緑色した栄養たっぷりなクラッカー。現在でも既に食事代わりにこういったクラッカーやビスケット類を食べている人もいますよね。映画はこの“ソイレント・グリーン”製造会社社長の殺人事件をきっかけに、刑事が“ソイレント・グリーン”の秘密に否応なく迫ってしまうというミステリー調の作品です。

勿論、結末は伏せておきますが、ラストのチャールトン・ヘストン扮する刑事の悲痛な叫び声が耳から離れなくなるでしょう。『猿の惑星』でもそうでしたが、強靭な男の代表のようなヘストンが最後に絶望を体現するのは効果大です。こちらも悲しくなってしまいます。

本作は人口過密の世界をリアルに描いていますが、中でも特に考えさせられるのが公的に認められた自殺センターなる存在。希望も無く苦しい思いをして生きていくよりは、自然の美しい風景を大スクリーンで眺め、ベートーベンの「田園」などのクラシック音楽を聴きながら、眠るように死ねる施設です。もしこんな施設が現在あれば、悲しいことですが、利用者は結構いるんじゃないでしょうか。自殺の原因は人さまざまですが、日本では毎年3万人もの人が自ら命を絶っているのですから。おっといけない。自殺センター推進派になるところだった。とにかく、こんな施設が出来ないことを祈ります。

なんか暗―くなって来ましたね。しかし、現在のままだとこういう世界になってしまうかもしれません。こういう世界にしてはいけないと皆が考えるためにも、是非ご覧ください。

さて2本目は、現実にこんなことがあるんじゃないの?と思える『カプリコン・1』
(Capricorn One 1977 アメリカ)。NASAが命運を賭けて(失敗したら宇宙開発事業費が大々的にカットされる)打ち上げた有人火星探査ロケット“カプリコン1号”。実は発射直前に不具合が発見されたものの今更延期できず、無人で発射し、乗組員たちに、人里離れた砂漠に作ったスタジオ内で火星着陸のお芝居をさせるのでした!とまあ、これを観てるとアポロ11号の月面着陸もホントだったの?と思ってしまいます。実際にインターネットなどでは、インチキ映像があたかも本当らしく掲載されることがありますよね。現在ではCGで何でも本物らしく作れますから、生で見たものしか信じられなくなってしまいます。

無人で火星付近まで飛んで行ったロケットが、地球への帰路でアクシデントにより爆発炎上。それに乗っていると世間では思われている乗組員が生きていてはお芝居がバレてしまいます。よって、NASAの陰謀グループは乗組員を抹殺しにかかるんですね。ここからは逃げる乗組員と追う陰謀グループの追っかけっこの始まり始まり。ジェリー・ゴールドスミスのダイナミックな緊迫感溢れる音楽も手伝って、畳み掛けるようなアクションとサスペンスでハラハラの連続です。セスナ機のシークェンスなんて特にそうですが、ところどころユーモラスなシーンも挿入し、とにかく面白いこと間違い無し。全編通じてアイデア抜群の脚本を生かした演出に乾杯したくなります。そして、ラストはガッツポーズだぜ!!

『ソイレント・グリーン』のように重い気分になったり、『カプリコン・1』のようにスカッといい気分になったり、水野晴郎さん(←若者には分かるんか?“シベ超”の山下閣下役でも一部にはカルト的人気。ありゃりゃ、余計分からんようになったやないか)も言っていますが、いやー、映画ってホントにいいもんですね。それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。(←それは淀川さんやろ!)

注釈です。“シベ超”とは正式には『シベリア超特急』と言い、映画評論家の水野晴郎氏が監督・主演を務めたクセになる映画です。皆さんも禁断の果実をかじってください。

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