アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第6回

平成25年3月19日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

今年の冬は全国的に厳しい寒さと局地的な大雪があったりでほんまに寒い冬ですね。北海道も当然ながらしばれる日々が続き、所によりドカ雪があったりで大変ですね。しかし、季節は確実に巡って来ており、もうすぐ春ですね。恋をしてみませんか。とか言ってる場合じゃなく、近くの国から核ミサイルが飛んで来たり、汚染ガスが襲って来るかもしれない物騒な状況であります。

そこで今回はその二つを題材にした映画を上映することにしました。問題の近くの国とは関係ありませんが。
まずは核ミサイルを扱った『合衆国最後の日』(Twilights Last Gleaming 1977・米+西独)から。

アメリカ本土にある軍の核ミサイル基地がテロリストに乗っ取られます。そのテロリストたちは元軍人で、国民には知られたくないベトナム戦争に関してのある機密文書を公開するよう政府に要求するために起こした行動なのです。そして交渉を有利に運ぶため、なんと大統領までも人質に取ってしまいます。政府・軍のやり方に対し腹に据えかねた所謂ハト派の人たちの心情は分からなくもないですが、あまりにも危険な賭けに出てしまったものです。

軍との小競り合いの末、遂にはミサイル発射ボタンを!どこに落ちても大惨事。合衆国だけが最後になるのではなく、第三次世界大戦になる恐れもあり。地下サイロから地上にせり上がって来る核ミサイルの姿にはほんまにゾッとします。大統領も人質になり、こうなれば乗っ取り犯の要求が聞き入れられるはずだと思っていると....。ジェリー・ゴールドスミスの緊迫感溢れる音楽と共に、とにかく最後まで緊張しっ放しです。そして最後の最後には、安心していいのかどうか複雑な心境になってしまいました。アメリカで撮影が出来なかったのも納得です。原題が“黄昏の最後の閃光”。詩的かつ恐ろしい題名です。

監督のロバート・アルドリッチは男臭く反骨精神溢れた映画を得意とする人で、『攻撃』『ロンゲスト・ヤード』『北国の帝王』などもお薦めです。『合衆国最後の日』とは関係ありませんが、アメリカ映画で描かれる核爆発の扱いが日本の幼稚園児レベルなのが多くてガッカリ。『トゥルー・ライズ』や『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』など映画自体はすごく面白いのですが、核爆発シーンはただでっかい爆弾が爆発しただけとしか描かれていないんですね。邦画の『原爆の子』や『黒い雨』を観てもらいたいですいね。これらを撮った大監督たちに。

さてお次は得体の知れないガスというか霧がアメリカの田舎町を襲う『ミスト』(TheMist 2007・アメリカ)です。

忽然と濃霧が発生し、人々は家や外出先で足止めを食らってしまいます。何故なら、その霧の中には汚染物質、ではなく、それこそ得体の知れない数々の生物たちがいて人間を襲って来るからなのだ!と書くと何だか三流SFモンスター映画みたいですが、スーパーマーケットに閉じ込められた人々を中心にモンスターとの壮絶な戦いや先の見えない焦燥感が非常にリアルに描かれ、自分もその場にいるような錯覚に陥ってしまいます。そしてモンスターというか異形の生物たちも気色悪く怖いのですが、極限状況に置かれた人々が一人の女性に洗脳されていく過程が実に恐ろしいのです。無実の人がいつの間にかその災害を引き起こした犯人にされてしまう。関東大震災など大災害が発生した時に流言飛語が信じられてしまったことはよく聞きます。今まで仲良くしていた人が自分を非難し犯人扱いする。ショックですよね。長く続く緊張感と視覚的・心理的ショック、そして最後に待っている展開で、映画を観終わってしばらくはどん底に落ちた気分が抜けませんが、その後、どんな時も冷静に自分を見失ってはいけない、希望を捨ててはいけない、ということを痛切に感じるはずです。

原作はスティーブン・キングの中編ですが、ラストはオリジナル。キング原作の映画化では、『キャリー』『シャイニング』『デッドゾーン』などもお薦めです。今回は春らしく明るい内容の映画ではありませんが、娯楽映画として十分楽しめる素晴らしい作品たちですので、是非観て下さい。そうそう、北海道の春は本州より一か月遅いしね

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