アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第3回

平成24年12月10日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

当映画館も3回目の上映をすることが出来、何とか年を越せそうです。こんなコラムやめちまえという声が大きくなったり、河村先生がもう止めろと言わない限りいろんな映画を紹介したいと思いますのでよろしくお付き合い下さい。

先ずは上映前にお詫びを申し上げます。前回紹介した「崖っぷちの男」をビデオ・レンタル屋で借りようとした人は既にお分かりのように、この映画のDVDはまだ発売されていないんですよ。来年1月の発売とのことでした。あまりの面白さに慌てて紹介してしまいましたが、陽春のお楽しみということで少し我慢して下さいね。

それでは今月の上映行ってみよう。

今回はこれまでの作品とはまたまた違ったジャンルということで、1本目は「縞模様のパジャマの少年」(The Boy In The Striped Pyjamas 2008 英+米)です。ジョン・ボイン作の世界的ベストセラー小説の映画化らしいのですが、私は読んでいません。題名だけだとなんのこっちゃと思うかもしれませんが、ナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺に材を取った所謂ホロコーストものの一つです。

この映画は珍しく加害者側の少年(ナチスのユダヤ人強制収容所長の息子)が主人公で、その子が収容所にいる一人のユダヤ人少年と収容所の金網越しに仲良くなっていきます。どちらも無邪気で幼い子なのですが、特に所長の息子は、どうしてその友達になった子たちが縞模様のパジャマ(囚人服ですね)を着て金網の中で暮らしているのか分かりません。ましてやその中で毎日大量虐殺が行われているなんて。お父さんも立派な軍人としか見えないし。周りの大人たちも臭いものには蓋をしろで悪いと思ってることも見て見ぬふり。そしてついにはその純真無垢さ故、悲劇へと導かれて行きます。ラストは言いませんが、この展開にはショックを受けました。全く疑うことを知らないこんな子供たちまで悲劇に巻ォ込んでしまうなんて、加害者側の非道・無責任な大人たちに神が与えた罰なのでしょうか。非常に辛い映画ですが、観終わった後、ダメなことはダメと言わなければならない、黙っていてはダメ、という作者たちの熱いメッセージが伝わって来ます。

次もホロコーストもので「ライフ・イズ・ビューティフル」(La Vita E Bella 1998 イタリア)。これはアカデミー外国語映画賞を取った映画なので観た方もいるのではないかな。一家で収容所に入れられたユダヤ人家族のお父さんと息子を中心に描かれた作品です。お父さんがこれまた無邪気な息子のため、収容所での辛い生活をこれはゲームなんだよと息子に説き聞かせ、収容所ごっこと称して過ごすのです。普通では辛い酷い生活も息子はごっこ遊びだと思っているので楽しいんです。先の「縞模様~」と違って明るく時にユーモラスに描かれて行きますが、やはり、ラストは涙無くしては観られません。でも、どんな時でも前向きに考える気持ちが大事なんだというお父さん=作者たちの熱いメッセージが伝わって来ます。

前回の「崖っぷちの男」がすぐに観られないということで特別にもう1本ホロコーストものを。「鯨の中のジョナ」(Jona Che Visse Nella Belana 1993 イタリア)です。収容所に強制収容されたユダヤ人一家の幼い純真な少年から見た過酷な収容所生活が丹念に時に詩的に静かに物語られます。全く派手なところが無い映画ですが、だんだんと静かに静かに胸に迫って来るものがあり、戦争が終わりお父さんを想い出すラストはやはり静かに涙が溢れます。また、エンニオ・モリコーネの素晴らしい音楽がこの作品をより一層味わい深い映画にしています。残念なのはDVDが未発売ということ。VHSでは観られるはずです。

オイオイ、今回は今までとえらい調子がちゃうやないか、と言われそうですが、いろんなタイプの映画を上映するのが当映画館のモットーであります。おっと言っておきますが、今回の3本、決して固く重苦しい作品ではありませんので念のため。観て良かったなあと思う、そういう意味では幸福感に包まれる映画ですので是非観て下さい。原題でイタリア語も憶えられたし。

それにしてもこれらの映画に出て来る子は無邪気でええ子ばかりやな。えっ!?皆さんもそうです、そうでしたって!?これは失敬失敬、ではまた次回

コラム一覧へ戻る

▲ページ上部へ戻る