アトリエトーク

映画の館『スポポン館』 第1回(柿落とし)

平成24年10月10日

館主 平 均(たいら ひとし) <ペンネーム>

この度、息子が河村塾でお世話になっているのをきっかけに、アカデミックで貴重な紙面を汚してしまうかもしれない駄文を掲載させていただくことになりました。

とにかく映画が好きなものですから、私が映画館で観た映画を基本に、学生の皆さんやそのお父さんお母さんがいろんな意味で観てよかったなあと思える一般的にはあまり有名ではない作品を紹介していく予定です。

ところで皆さん、今年のアカデミー賞の作品賞は何だったか覚えていますか?

そう、フランス映画の「アーティスト」(The Artist、2011 年)でしたね。

本来英語作品に与えられるアカデミー賞なんですが、なんとこの映画はセリフが全編字幕のみの無声映画だから作品賞の対象になったとのことです。

ハリウッドの古き良き時代、映画がサイレント(無声)からトーキー(音声)へ変わろうとする頃の映画界、男優女優の恋を描いてとってもチャーミングでいい気分にさせてくれる作品になっていました。そして、今この時代にサイレント映画というのが逆に新鮮でもありました。

←ちょっと待たんかい、有名なアカデミー作品賞の映画を取り上げてどういうつもりや、とおっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、実は今回紹介したい映画は「アーティスト」ではなく、その名もズバリ、「サイレント・ムービー」(Silent Movie、1976 年、アメリカ)なのであります。

題名からして“無声映画”のこの作品、35 年前に既に全編セリフは字幕で昔のサイレント映画を現代に甦らせていたのです。「アーティスト」は昔のハリウッドを描いていましたが、こちらは製作当時の現代にサイレント映画を作ろうとして出演スター集めに四苦八苦する監督と部下たちをサイレント映画スタイルで描いています。

そして「アーティスト」と決定的に違うところは、徹底したドタバタ・コメディであることです!!(←だから、アカデミー賞取られへんかった、てか?)

オープニングの音楽からして“ゲバゲバ90 分”(←今の若もんに通じるわけないやろ!)かと間違える楽しさだし、次から次と“ドリフ大爆笑”(←これは分かるわな)みたいなギャグやコントが飛び出して来るわで、お腹の皮はよじれっぱなし、笑い過ぎで眼にはドバドバ涙がいっぱいという状態に。勉強の合間の体操替わりにはもってこいの映画です。

ポール・ニューマン、アン・バンクロフト、ライザ・ミネリ、ジェームズ・カーン、バート・レーノルズなど当時の本物の大スター(←ピンと来るかいな)がぞろぞろゲスト出演し、おまけに本人が今見たら恥ずかしいであろうおバカ演技をやってくれてます。

また、監督と二人の部下役の俳優も超個性的で、特にギョロ目のおっさんは一度見たら忘れられなくなるでしょう。

監督役とこの映画「サイレント・ムービー」の本当の監督をやっているのが、我が家ではメルと言えばメル・ギブソンではなくメル・ブルックスで、「珍説世界史PART Ⅰ」(History Of The World:Part Ⅰ、1981年、アメリカ)なんていう原始時代からフランス革命までを描いた映画も監督しており、ここでは時代時代で何役も演じてます。

学生諸君、歴史の勉強するには丁度いい映画ですよ、と言いたいところですが、ブラックでしつこい笑いがたっぷり詰め込まれてるのでご用心を。でも、宗教裁判のシークエンスが昔の映画のレビュー(ミュージカル)・スタイルで描かれていたりで、頭に残ることは間違いなし。おまけに全く作る予定のないPART Ⅱの予告編もあったりで、クエンティン・タランティーノ監督の「グラインドハウス」(Grindhouse、2007年、アメリカ)の先を行ってます。

メル作品2本合わせて3時間、たまには勉強や仕事のこと(またはゲーム?)を忘れ、映画を観て大笑いしリフレッシュして下さい。私の少年時代は、見逃すまいとテレビの洋画劇場を必死でチェックしてたもんですが、自宅でいろんな映画を好きな時に観ることが出来る時代なんですから。

では、次回があればまた2本立てで上映します。

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