アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.33

平成26年3月14日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

『コミュニティデザインの時代 ―自分たちで「まち」をつくる―』
 (中公新書) 山崎 亮 著

高3生の塾生との二次試験の小論文のために受験勉強の一環として読みはじめました。予想以上に内容のつまったいい本でした。全四章各5~8節を、それぞれ一節ごとに要約とコメントを書いてもらうという作業を彼に課しました。センター試験では苦労していた彼ですが、今回の入試対策では、水を得た魚のように生き生きとして授業に臨み、毎回の課題を着実にこなし、後半は素晴らしいコメントを書いて来て、私を心底驚かせてくれました。私が高校生の人とやりたかった授業が、こういう受験対策という形ではありますが、実現できたことは、本当に彼に感謝したいと思います。
後期の結果は3月21日です。

『セラピスト』(新潮社) 最相 葉月 著

思わぬ所で、思わぬ書物と出会う時があります。センター試験の直後、何気なく入った本屋さんの戸棚の単行本の帯から「中井久夫」「河合隼雄」という名前が飛び込んできたと思った瞬間、レジに並んでいました。作者自身がまさに精神分析学の「巨星」とも言うべき中井久夫の絵画療法を受ける傍ら、箱庭療法の日本への導入者である臨床心理学のもう一人の「巨星」河合隼雄の実像にも迫っていく精神分析学や臨床心理学そしてカウンセリングに興味を持つ人に是非お読みいただきたい、素晴らしいノンフィクションです。自分の心の深層とむきあう難しさと奥深さを改めてじっくり考えさせてくれる非常に内容の濃い書物でした。

『難儀もまた楽し』(PHP文庫) 松下 むめの 著

塾経営のことで悩んだり行き詰まったりした時、必ず読むのがパナソニックの創業者である松下幸之助の一連の書物ですが、今回はその夫人である松下むめのさんの書物をご紹介します。この人は三洋電機の創業者の実姉でもあり、戦後日本の高度成長を経営者の側から支えた女性です。さすがは幸之助氏の夫人であるだけに、ことばの一言一言に人生や生活の中で鍛え抜かれた人だけが持つ、裏付けのある確かな重みと明るく謙虚な人柄が感じられて、感銘をうけます。

話し言葉であるはずなのに、過不足が全く感じられず、見事な生きた文章となっている。言葉の魅力とは何か、という事を考えさせてくれる一冊でもあります。

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