アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.32

平成26年1月14日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

『応援する力』(朝日新書) 松岡修造 著

一冊目は、あのスポーツキャスターとして有名な元プロテニスプレーヤーの松岡修造氏の『応援する力』をご紹介します。プレーしている選手と同等かそれ以上の熱さで応援を繰り広げる松岡氏。一人一人のスポーツプレーヤーの内面にまで入りこみ、見事な人物記になっていました。特に浅田真央さんと石川遼さんの所は意外な一面を知ることが出来、興味深かったです。「応援する」ことの難しさと奥深さを垣間見せてくれた一冊でした。

『言葉と歩く日記』(岩波新書) 多和田葉子 著

二冊目は、現代日本を代表する純文学作家のドイツ在住22年の多和田葉子さんの身辺雑記と言ってよい書物が岩波新書の一冊として出ました。どんな非日常的な日常生活が待ち受けているのかと思いきや、意外と普通人としての側面が多く描かれていました。もちろん記されているのはドイツ人をはじめとした知識人との交流が中心ですが、その彼女をとりまく人たちの分野が、文学のみならず、哲学・演劇・美術等多岐に渡っていて驚かされます。芥川賞授賞以来、第一線を20年以上も走り続けて来ている多和田氏のその秘密の片輪に触れた気がしました。

『光秀の定理(レンマ)』(角川書店) 垣根涼介 著

最後は非常にユニークな歴史小説が登場しました。垣根涼介氏の最新作『光秀の定理(レンマ)』です。とにかく型破りの小説で、光秀夫妻と光秀をとりまく三人の武士と僧侶が実に魅力的に描かれます。私はこの時代が好きで司馬遼太郎のあの名作『国盗り物語』をはじめ、様々に乱読してきましたが、このようなスタイルで光秀の若き日からを描いた物語は初めて読みました。カラッとして、テンポが良く、それでいて軽い感じがしない。『ワイルド・ソウル』や『君たちに明日はない』で人気を博した著者が満を持して挑んだ歴史小説です。まだ残念ながら200頁ほどの段階ですが、文句なしおススメの一冊です。

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