アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.28

平成25年8月20日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

『灯をともす言葉』(河出書房新社)
   花森 安治 著

『吉村昭が伝えたかったこと』(文春文庫)
   吉村 昭 著

『海賊と呼ばれた男』(講談社)
   百田 尚樹 著

まず一冊目は、おそらくこのコラム初登場だと思いますが、あの伝説的雑誌『暮らしの手帖』の初代編集長にして、稀代の名ジャーナリスト花森安治氏の名文集です。大学を出た後、母から聞いていた『暮らしの手帖』(当時、家にも常に何冊か置いてあった)を映画評論を中心にパラパラと見ていた時、花森氏のコラムは常に目を通していました。独特の文体、厳しくて鋭い社会時評。その代表的コラムを集めたものが、『一銭五厘の旗』という名著でした。あまりに鋭く深く世間の有様と人々の生き方を批評しているその本質的な内容にショックを受けたことを、今もはっきりと記憶しています。

この『灯をともす言葉』も、北海道に渡って来る直前の自分の初心を思い起こさせてくれます。「姿は小さくても志は大きく」花森氏から学んだ生きる姿勢を、これからの我が私塾づくりに少しでも生かしていけたら、と願っています。

二冊目は、同じ年(昭和2年)に生まれた私の父が敬愛してやまない作家、吉村昭氏の最新刊『吉村昭が伝えたかったこと』をご紹介します。記録文学『三陸海岸大津波』『関東大震災』(いずれも文春文庫)、そして『零式戦闘機』(新潮文庫)等でますます注目を集めている吉村昭氏の素顔が、写真も含めていろいろと垣間見ることが出来て、一ファンとしてはとても楽しい一冊でした。中でも、冒頭エッセイ「さか立ち女房」とロングインタビュー「「書くこと」と「書かないこと」ー吉村昭と歴史小説」を面白く、興味深く読みました。長編小説を書いた後は、1ヶ月ほど虚脱状態が続くらしく、現実の感覚を取り戻していくためにも、短編小説書くことが大切だとの事、村上春樹と同じ事を言っていたのでビックリしました。巻末のガイドブックも、これだけの著作を一人で書き記した作家として、畏敬の念を払わずにはいられません。

最後に、本屋大賞に輝いた、出光興産の創業者、出光佐三氏をモデルとして、そのさわやかで見事な生涯を描いた『海賊と呼ばれた男』。残念ながら講習中のため、上巻を読み終えたところでギブアップ、時間切れとなりました。申し訳ありません、詳しい内容は次回をお楽しみに願います。戦中戦後に、ここまで自分の理想と自分の会社と自分の社員のために生命を賭けた人物がいたとは。「ヤられたら、倍返し」をはるかに超えたスケールです。

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