平成25年1月10日
『理科系の作文技術』(中公新書)
木下 是雄 著
『1984 Book 1~3』(新潮文庫1~6)
村上 春樹 著
『人生を賭けて』(小学館)
金本 知憲
新年あけましておめでとうございます。
今年も平均氏と♡新しき糧の両氏に熱さだけは負けない読書コラムを書いていきますので、ご愛読のほど、よろしくお願いします。
平成25年の新年第一冊目のご紹介は、中公新書の『理科系の作文技術』です。この名著の第一版は1981年9月25日なので、出版されて30年以上がたちます。私もこの仕事について数々の文章読本に目を通してきましたが、文章の書き方についての本でこの本の右に出るものは、見た事がありません。もうかれこれ5回ほどは読み返していますが、読む度に新しい発見があります。文系の人間である私にとっても傾聴に値する、アイディアの宝庫とも呼ぶべき書物です。
名作の多い中公新書の中でも、特に秀逸です。大学受験に小論文が必要な生徒さんに、ぜひチャレンジしていただきたい一冊です。超のつくオススメ本です。
二冊目は、もう一年以上読んであと50頁ほどで完読する、村上春樹のミリオンセラー『1984 Book 1~3』をご紹介します。主人公である天吾と青豆の章に、牛河という私立探偵の章を加え三章立てになって話がとても静かに、そして時にはドラマチックに進行していきます。「幼なじみ」の天吾と青豆が、ある組織の問題に深く絡んでしまい、数々の危機に遭遇しながらも、二人の来たるべき「出逢い」を待ち望むというお話です。チェーホフの「サハリン島」やオーウェルの「1984年」等の名作をとりこみながら、レイモンド・チャンドラーに深く傾倒している村上春樹らしく、探偵小説(牛河のキャラが最高だ!!)風の趣きもあり、飽きさせません。ここでは詳述を避けますが、フカエリこと深田絵理子という謎の美少女もとても魅力的で、この小説のテーマの鍵を握る存在です。読み終わりたくないので、ひきのばしてひきのばして来ましたが、あと50頁で終わってしまいます。読書の終わりは旅の終わりのような余韻と脱力感を感じます。
三冊目は、「鉄人」と言われ、「兄貴」と慕われた連続イニング出場世界記録保持者の、野球人としての生き様を描いた『人生を賭けて』です。あまりにも過酷な最後の数年間のリハビリとトレーニングの日々の記述から始まるのですが、こんなにもプロ野球選手とは厳しいものなのか、本当に苦しい内容で息がつまりそうになりました。昨年は多くの有名な方々が亡くなる中で、野球選手の引退も続きました。松井秀喜、金本知憲、城島健司…この三人の引退は、日本のプロ野球の世代交代を感じさせる出来事でした。
ワールドシリーズでMVPを獲得した松井の勇姿。第2回WBCで縁の下の力持ちとして連続優勝に貢献した城島。そして、あの万年最下位の阪神に二度のリーグ優勝をもたらした金本。
彼らに心よりの拍手を送りたいと思います。長い間ありがとう。そして、お疲れ様でした。
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