アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.20

平成24年12月17日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

『日本語で一番大事なもの』(中央公論社)
   大野 晋・丸谷 才一 共著

『この国のかたち 一~六』(文春文庫)
『風塵抄 一~二』(中公文庫)
   司馬 遼太郎 著

『64 ロクヨン』(文藝春秋社)
   横山 秀夫 著

まず最初に、今年の河村国語作文塾&学びのアトリエ『塾長のオススメです!』の末尾を飾るにふさわしい著作(対談)から入らせていただきます。この本の対談者の御一人である丸谷才一さん(先日亡くなられました。心よりご冥福を申し上げます。)が、日本文学・日本語の知識では不世出と言っていい大野晋さんと、じっくり議論を進めていきます。「係り結び」がどういう変遷をたどっていくかを万葉集から新古今和歌集までの有名な歌を次々と例に挙げながら解き明かしていくくだりは「なるほど!」と何度も目からウロコがおちる始末。中でも古文の連体形から現代文の終止形への変化についての説明は、そういう説がある事は知っていましたが、ストンと腑におちました。自分の日本文学・日本語学への教養のなさに嘆きつつも、向学心を刺激させてもらった一冊です。

次に、今の政治の混迷状況に心を痛めている方も多いと思いますが、この「政治騒動」の中で、知らず知らずのうちに本棚から手にとったのが、司馬遼太郎氏の『この国のかたち 一』でした。見事なまでに明晰で硬質しかも簡潔な文体で、幅広い教養に裏打ちされた司馬氏の考えがエッセイという形で展開されていきます。自分の無力さ(特に政治の面での)を嘆いているだけではいけないという事を切々と訴えかけてくるこの書物は、同じく最晩年のエッセイ『風塵抄 一~二』と共に、折に触れて座右の書としてひもとこうと思います。歴史(特に日本史)の好きな高校生の人たちに、特に読んでほしいオススメの一冊です。

最後に、七年間の沈黙を破って発刊された横山秀夫氏の『64ロクヨン』をご紹介させてください。警察小説の第一人者として90年代から一目も二目も?置かれていた著者の7年ぶりの新刊。日本の警察小説といえば、『警察の血(上・下)』、『警察の条件』、『制服捜査』等々の著作で有名な佐々木譲氏をひいきにしている、長編小説どんと来い!の私ですが、この単行本全617頁の密度の濃さには正直ブッ飛びました。
D県警内の広報部を舞台に、失踪中の愛娘(17才)を抱えながら、上層部と新聞記者たちの間にはさまって警察報道をめぐって揺れ動く、主人公三上から目が離せません。まだ半分強しか読んでいませんので、どういう結末を迎えるのか、三上の娘さんは果たして無事なのか・・・。

12月中の完読を目指してワクワクドキドキの年末になりそうで、冬期講習中の通勤の地下鉄・市電を乗り越さないか、今から心配しています。 (『このミス』2012年度第1位に選ばれました!! )

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