アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.14

平成24年6月12日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

ジュール・ベルヌ 著 『二年間の休暇 』(上・下)(岩波少年文庫)(旧題:『十五少年漂流記』)

井波 律子 著 『論語入門』(岩波新書)

佐々木 譲 著 『警官の条件』(新潮社)

今月は、何と言いましても、あの『十五少年漂流記』の新訳が出たのでご紹介させていただきます。この『十五少年漂流記』という児童文学は、ドノヴァン・ブリアン・ゴードンをはじめとする15人の少年たちが無人島に流されて、さまざまな試練に出会い、その試練をのりこえていく中で結ばれていく仲間の絆が素晴らしい、私の読書のまさに原点といってもいい物語です。

最近、その新訳が岩波少年文庫で久しぶりに出たので、毎日1~2頁ずつかみしめて読んでいます。それにしても、いくら原題に近いとはいえ、『二年間の休暇』という題名は昔からのこの物語の熱烈な一ファンとしては納得できかねます。

二冊目は、京大の中国文学の流れを継承し三国誌研究の大家であられる井波律子先生の『論語入門』です。先生は岩波書店から三冊もの中国の名言集を出され、又岩波新書も三冊、さらには岩波ジュニア新書の名著『故事成句でたどる楽しい中国史』等々、一般市民の人たちに大変楽しく中国の古代文学を紹介してこられましたが、今回満を持しての『論語入門』です。

明快な筆さばきは、さすがという所で、ズバッズバッと、孔子という「大きな」人物に肉迫していくテンポは実に心地よく読者の胸に迫って来ます。昔「論語」は一読したけれど、とおっしゃる大人の方たちに是非この書物の一読をオススメします。

生きる事への深い洞察力に裏打ちされた孔子の「言葉」に、今の厳しい時代を生き抜く励ましや様々なヒントを受け取ることが出来る一冊です。

最後に私の大好きな道内出身の直木賞作家佐々木譲氏の『警官の条件』についてふれさせていただきます。かつて『エトロフ発緊急電』他で冒険小説ファンのハートをがっちりつかみ、『笑う警官』をはじめとする北海道警察シリーズ、さらには『制服捜査』『警官の血』『廃墟に乞う』等のいわゆる警察小説でもファンをうならせてくれました。

『警官の血』の続編であるこの作品は、主人公の刑事安城和也と復活した伝説の刑事加賀谷仁のまさに父と子の対決ともいうべきドラマが展開されます。出て来る安城和也たち捜査陣の名前を覚えきれずに、途中で少々息切れしましたが、最後は見事なフィニッシュで、深い余韻と感銘を覚えました。警察小説ファンの方に、特にオススメしたい一冊です。

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