アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.13

平成24年5月12日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

ドナルド・キーン 著(角地幸男 訳) 『私と20世紀のクロニクル』(中央公論新社)
                       (後、『私の自伝』(中公文庫)と改題)

朽木ゆり子・前橋重二 著 『フェルメール巡礼』(新潮社)

藤沢 周平 著 『三屋清左衛門残日録』(文春文庫)

一冊目は、日本文化・日本文学研究の第一人者、ドナルド・キーンさんの自伝です。司馬遼太郎をして、「話している間にも、なつかしさを感じる稀有の人」と言わしめたキーンさんの懐の深さはとにかく尋常ではありません。そのキーンさんもやはり出発点は「源氏物語(アーサー・ウェイリーの英訳本)」だったと、この伝記を読んで知り、「そうか、あのキーンさんも源氏だったのか・・・」と感嘆しきりでした。日本での初めての留学先であった京都大学で出会った助教授の永井道雄氏(後、文部大臣も経験)にはじまる様々な文学者との親交が、キーンさんの日本文化への傾倒を支えていると知った事にも感銘を受けました。ハーバード・ケンブリッジ・コロンビア各大学の様子も垣間見えて、とても楽しい刺激を色々ともらった書物でした。あの偉業たる『日本文学の歴史』全18巻も少しずつ読み進めていかねば、と決意を新たにさせられました。

二冊目は、私の好きな「とんぼの本」シリーズの最新刊の一冊をご紹介します。まさに「静謐」という言葉がピッタリのフェルメールの名画の数々と、その画が所蔵・陳列されている美術館のある地図のマッチングが、フェルメール好きの方にはたまらない、旅の誘(いざな)いとなっています。「デルフト眺望」やフェルメール邸の「再現」図、そしてそれぞれの美術館の写真とその紹介の一つ一つに心躍らされる、「とんぼの本」シリーズの良さが見事に出た一冊です。絵の好きな方に是非おすすめしたいぜいたくな本に仕上がっています。

最後は、最近このコラムの定番になりつつある藤沢周平氏の小説でしめくくらせて下さい。彼の後期の傑作の一つで、仲代達夫が主演人気を博したNHKの時代劇ドラマにもなった作品です。東北の小藩の用心にまでのぼりつめた三屋清左衛門の、長男に家督を譲ったあとの日常生活を綴った時代小説です。登場する男性・女性の一人一人が本当にいとおしく、ゆっくりしたテンポでありながら、激しい剣での格闘シーンもあり、私の

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