平成24年2月20日
「環境」をテーマにした評論がそろそろ出題されるのではないかとひそかに予想していたが、その通りであった。というのも、2008年本試験の評論は「住居論と身体性」、2009年同「政治学と市民社会」、2010年本同は「資本主義と差異」、2011年本同は「バリアフリーと関係性」という大変現代的なテーマを軸に、文章自体も示唆に富むものが、この4年間続いたし、3・11の影響もあり、このテーマは今や避けられないものだと感じていたからだ。
ところが、木村敏さんを持ってきたあたりは、一筋縄ではいかないと思ったが、はたしてその通りだった。文系と理系を横断するような内容であった事は歓迎だが、昨年や一昨年のように、もう少し具体性を伴う記述がある方の文章の方がよかったと私は思う。
「環境」「境界」「個体」「自己意識」「差異」そして最後には「気(配)」といった、現代文のキーワードをずらりと並べたこの文章は、各予備校の分析で述べられているように抽象度が高く、受験生には決して読みやすいものではなかっただろう。
が、著者には大変失礼ではあるが、抽象的だから文章が難解であっていいというものではない。学者の先生方の文章であっても、論理的かつ明晰な文章で、20歳前の今を生きる受験生たちの刺激になる文章を書ける方は、理系文系問わず多くおられる事と思う。センター試験の評論には是非、論理的だが発見のある、難しいけれど読んで楽しい文章を探して来ていただきたいものである。
卒業生の身びいきととられると残念だが、京都大学の入学試験(特に文系)の最近の現代文の出題は、わかりやすく読めるが、とても考えさせられる文章が多い。そうした問題文をさがす労をとられることを切に願う。であれば、少々長い評論が出題されたとしても、受験生諸君は決して不満をもらしたりはしないだろう。
「まず評論に名文を!!」と述べて、今月のコメントを終了いたします。
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