アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.6

平成23年10月13日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

ルーマー・ゴッデン著 『おすのつぼにすんでいたおばあさん』(徳間書店)

四方田犬彦著 『「七人の侍」と現代―黒澤明再考―』(岩波新書)

梅棹忠夫著 『夜はまだ明けぬか』(講談社文庫)

一冊目のおすすめは先月にも取り上げた、ルーマー・ゴッデンの『おすのつぼにすんでいたおばあさん』。中央図書館で借りてきました。おばあさんが日々の生活への夢をおさかなさんへのお願いという形で次々と実現させながら、やがてまさにその夢の通りにきらびやかな生活を獲得するのですが、次第に本来の質素でつつましい生活の素晴らしさに気づき、そのつつましさの中に戻っていくというお話でした。絵本だとその繰り返しのリズムが、なぜか楽しく自分の中にストンと入ってくるのは不思議です。絵本についてはまた折に触れてご紹介していきたいと思います。

二冊目は『「七人の侍」と現代―黒澤明再考―』です。昨年から一カ月に一、二度ほど、気が向いた時に読み進めてきました。第6章の侍一人一人の具体的で緻密な行動と心情の分析まで読み進めると、がぜん楽しくなってきました。先月の鈴木敏夫氏の現場からの報告(『仕事道楽ースタジオジブリの現場ー』(岩波新書))とは一味違って、日本を代表する映画評論家の一人であると言われる四方田氏の記述は、読み進めれば進むほど、「七人の侍」の魅力と限界が浮き彫りになってくる一冊です。黒澤ファンの方にこそ読んで頂きたい書物です。

三冊目は、文化勲章を受章し、昨年亡くなった梅棹忠夫氏の一冊です。『知的生産の技術』や『文明の生態史観』で有名な著者の晩年の自伝的著書です。梅棹氏は、今西錦司、西堀栄三郎、桑原武夫、河合隼雄等、錚々たる「京大山脈」の中でも、大変ラディカルな学説を唱え、その独創性において第一級の学者と言われている方です。その梅棹氏が70歳を前にして失明。大変な苦しみの中、口述筆記で次々と自分の著作を世に送り出し、自己の学問を体系化していく不屈の闘志には、本当に感銘を受け、胸が熱くなります。戦後、日本語ローマ字化運動に取り組んだ人だけに、大変簡潔でわかりやすい文章を書いた学者でもありました。季刊誌『考える人』2011夏季号(新潮社)梅棹忠夫特集号はアトリエにございますので、是非興味のある方は声をかけてください。フィールドワークを目指す人におすすめです。

コラム一覧へ戻る

▲ページ上部へ戻る