アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.5

平成23年9月13日

河村国語作文塾&学びのアトリエ
河村 勝之

村田喜代子著『縦横無尽の文章レッスン』(朝日新聞出版)

鈴木敏夫著 『仕事道楽-スタジオジブリの現場-』(岩波新書)

一冊目の『縦横無尽の文章レッスン』は芥川賞他、数々の受賞歴を誇る純文学作家が、山口県下関市のとある大学で、10年ほど行った文章創作ゼミのある年の講義録をもとに、一冊の本にまとめた見事な"文章読本"です。

今春出版されて以来、何度も書評に取り上げられていたので買ってみたのですが、前半(前期第一週~第四週)と後半(後期第一週~第六週)とまとめ(最後の授業)に分かれていて、特に後半の「後期第三週」からの展開と引用文及びそのコメントが圧巻でした。「後期第六週」の『ねずみ女房』(ルーマー・ゴッデン著、石井桃子訳 福音館1977年)は児童文学ですが、大変深い味わいの中に、希望と温かみがにじんでいて、ラストシーンでは思わず微笑んでしまいました。

この原作者ルーマー・ゴッデンという人は児童文学の世界では有名な方らしいのですが、私は全くの初耳。次回は彼女の文学について取り上げてみたいと思います。

二冊目は岩波新書からで、鈴木敏夫著『仕事道楽ースタジオジブリの現場ー』です。鈴木氏は知る人ぞ知るスタジオジブリの名物プロデュ―サーです。その彼が、自分がなぜアニメ制作に関わる事になったのか、スタジオジブリはどういう経緯で生まれたのか、さらには宮崎駿・高畑勲という日本アニメ界の巨匠ともいうべき二人の人となり等々を、実に楽しく生き生きと時にはスリリングに語ってくれる一冊です。

よくぞここまで付き合っていけるなぁと、ほとほと感心する程の向き合い方と我慢強さを、こと宮崎・高畑両監督には徹底して見せる鈴木氏。この忍耐の背後に流れる二人への深い敬愛の念と、アニメ作りに寄せる鈴木氏のピュアで繊細な感性がストレートに伝わってきました。

アニメ・映画制作などに興味・関心がある方に是非読んでいただきたい一冊であると同時に、現代の稀有な"友情物語"としてもお勧めしたい一冊です。

コラム一覧へ戻る

▲ページ上部へ戻る