アトリエトーク

『塾長のオススメです!』 Vol.1

平成23年5月11日

進学教室 札幌フォレスト
河村 勝之

『サンデル教授の対話術』
   -最高の教育とは自分自身でいかに考えるかを学ぶことである-

『ドラッカーの講義(1943~1989)』
   -マネジメント・経済・未来について話そう-

『奇跡の授業』
   -エチ先生と『銀の匙』の子どもたち 伝説の灘校国語教師・橋本武の流儀-

いずれも、三傑人自身の授業についての書物です。

まず、マイケル・サンデル氏。大学の教師で、これだけ授業の方法について深く考えている姿にまず驚かされました。アリストテレス、カント、ロールズ等の哲学者の考え方を縦糸に、現代の様々な事象を横糸にして、美しい錦を織り上げていくように、まさに学生たちと授業を創っていく、その見事なまでの対話術の裏側に、これだけの思索と準備が存在したことに感銘を受けました。

次にP.F.ドラッカー氏。有名な著作を次々と書き連ねたこの経営学の巨人にも、講義録の書物はおそらくこれが初めてでしょう。『もしドラ』で、日本でも経営学に興味のない人にも一躍有名になった感があります。が、彼の真骨頂は、文明の動きについての洞察力が優れている点にあり、それが私のような門外漢をも惹きつけるのだと思います。そのドラッカーの凝縮された講義の内容には、ついていく学生・院生も必死だったのではないでしょうか。彼が「知識社会」の到来をこんなにも早く予言していた事も「目からウロコ」でした。

最後に、日本の国語教育界の巨人とも呼ぶべき橋本武氏の授業を述べた書物を紹介させてください。彼は戦後間もない灘中で、中勘助の名作『銀の匙』だけを、中学校3年間を通して扱ったという伝説の授業を数度に渡って行い、灘高校の東大の合格実績の大躍進を担った影の立役者とも言われていたそうです。が、その本質を極めた授業は、実績うんぬんで済まされるものではなく、灘中を巣立ち、やがて日本の中枢を支えることとなった俊秀たちの胸にいつまでも残る、すばらしいものでありました。

この三傑人の著作に共通するものは、自分の専門に関する厳しいまでの追究心と、共に学ぶ若者への限りない愛情です。「万年一書生」を自認する私には、まさに「爪の垢を煎じて飲む」という教訓に満ちた書物たちでもありました。特に、『サンデル教授の対話術』がオススメです。

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