アトリエトーク

『私の敬愛する作家のMy Best 3』

平成20年6月15日

代表  河村 勝之

最近は、純文学より歴史小説を読む機会がなぜか多く、歴史小説といえば、やはり司馬遼太郎の作品を最初に取り上げたいと思います。とにかくこの人の作品はエネルギーがあり、テンポも良く、随所で余談もありますが、歴史に少しでも興味と関心のある人にはとてもオススメです。

一冊目は『竜馬がゆく』(文春文庫 全8冊)です。かの薩長同盟の立役者でもある坂本竜馬と、彼の生きた時代を描いた歴史小説です。我々の世代の日本史や幕末の好きな人であれば、高校時代には一度は手にとったことのあるほどの超人気小説でした。竜馬の自由でスケールの大きな行動が、作者の歯切れのよい文体に乗って特に若い人達に感動を呼ぶこと間違いなしです。

次のオススメは『菜の花の沖』(文春文庫 全6冊)です。北海道、特に函館にゆかりのある淡路島出身の大船頭、高田屋嘉兵衛の生涯を描いた全6巻の長編小説です。江戸末期の函館の今の形の原形を作ったと言われ、市内に銅像も立つ主人公のまさに波瀾万丈なしかし毅然とした生き方に、読者は深い共感を覚えることでしょう。当時の海運事情や日本とロシアの交渉史も理解できる、そうした意味でも大変お得な一冊です。司馬遼太郎をして「江戸時代の人物の中で最も好きな人物」といわしめたほどの高田屋嘉兵衛。読んでのお楽しみです。

最後は色々と迷いましたが、これも高校時代に読んだ『尻くらえ孫市』(講談社文庫 全1冊)をオススメします。戦国時代、信長をはじめとするどの戦国大名からもその驚くべき鉄砲技術で恐れられた雑賀衆の頭領、雑賀孫市の生涯を描いた傑作歴史エンターテイメント小説です。何と痛快な人生かと思わず膝をたたくことしきりだった事を今も鮮やかに思い出します。

司馬遼太郎の数々の作品を愛読した日本人の多くは、高度経済成長と相まってその主人公達の夢や生き方を自分の人生に投影することができて、幸せだったと思います。しかしその司馬も晩年には『このくにのかたち』『風塵抄』等のエッセイで日本や日本人のあり方に警鐘を鳴らしています。

*訂正 前回の塾長の読書コラムvol.1の中で、「ゴンクール賞」が「ゴングール賞」に、「フナック書店」が「ラナック書店」となっておりました。お詫びして訂正いたします。

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