平成20年11月15日
私はこれまでにアルバイトで進研模試の採点を7年、河合塾全統記述模試・北大オープン模試を2年半しており、その中で模試の全国基準の作成(部分点の設定など)にも何度も携わってきました。社員との話し合いにも参加したことがあります。今回はその経験を生かして、どのような答案が記述式では減点されやすいか?どのような説明を書いたらいいのか?について具体例を挙げながらお話したいと思います。自分では正解していると思ったのに減点されたことがある人はぜひ目を通してみてください。
問題1
長さが20cmの針金がある。これを折り曲げて長方形をつくる。縦の長さが何cmのときに面積が最大となるか答えよ。
解答例1
縦と横を足すと10cmだから
S = x(10 - x) = -x2 + 10x = -(x-5)2 + 25
0 < x < 10 より x=5 で最大になる。
よって、答えは5cm。
問題で「~の値を求めよ」となっていると『断りなく求めるものを x とおいて方程式や関数をつくる』という人は多いです。このくせをつけてしまうと、もし一つの問題で「(2) ADの長さを求めよ。また、BDの長さを求めよ」などのように2つ求めなければいけないときに両方とも x とおいてしまい、その結果として一つの解答の中で文字 x が複数の意味(ADだったりBDだったりということです)をもってしまいます。このときは、場所ごとにその意味の区別がつくような説明が式や文章などで無ければ減点(最悪の場合は0点)です。また、x が何を表すかはっきりしない答案は、惜しい式があっても部分点を与えにくくなります。
解答例1では問題文に無い文字 x, S がいきなり現れています。ここではきちんと「長方形の縦の長さを x cm、面積を S ㎠とする。」のように書かなければいけません。(教科書の例題でも必ず書いてあります)数学は単に『答えが求められるか』だけでなく、『答えに至る過程をきちんと説明できているか』も採点対象です。自分で問題文に無い記号を導入するときには必ずそれが何を表しているのかを書いておきましょう。
このタイトルだけを見ると当たり前だと思うかもしれませんが、実際に次のような間違いをしている答案は多いです。
問題2
2次方程式 x2 + 2kx + 2k + 1 = 0 が異なる2個の実数解をもつような定数 k の値の範囲を求めよ。
解答例2
判別式を D とすると
D = 4k2 - 8k - 4
= k2 - 2k - 1 > 0 (以下略)
これはどこが誤りかというと2番目のイコールの使い方です。4で割ったものをイコールで結んでしまっています。これだと結局、最初は
D = 4k2- 8k - 4
で計算を始めたのに、最初と最後だけを見ると
D = k2- 2k - 1
ということになってしまい、それより以下は「誤った式から偶然同じ答えが出たもの」と処理されます。正しくは次のように書きます。
D = 4k2- 8k - 4 > 0
∴ k2 - 2k - 1 > 0
解答例3
判別式を D とすると
D = 4k2- 4(2k+1) > 0
= 4k2 - 8k - 4 > 0
= k2- 2k - 1 > 0 (以下略)
これもイコールの使い方が誤りです。3番目のイコールだけでなく2番目のイコールも減点対象です。イコールの記号は『1行目の不等式と2行目の不等式が同じ』という意味では使えないので不等式どうしをイコールで結ぶことはできません。一度不等式を作ったら、その後は不等式の変形を行います。ですから、上の解説のようにイコールも何もなしで書けば大丈夫です。また、⇔ という記号を使いたがる人もいますが、私の経験上数学的に正しくこの記号を使えている答案はほとんど見たことがないので使わないほうが無難です。
解答例4
判別式を D とすると
D = 4k2 - 8k - 4 > 0
∴k2 - 2k - 1 > 0
よって、k = 1 ± √2 > 0 より
k < 1 - √2, 1 + √2 < k
これもよく見受けられる間違いです。
k = 1 ± √2 > 0
の部分で、当然 1 - √2 = -0.42… < 0 なので不等号の使い方が誤りです。不等号の記号 > には「その2つの値の外側」という意味はないので、解答例4のように書くと間違いとして減点か×になります。2次不等式の解法としてこのように書いてある本があるかもしれませんが、記述試験では使えません。正しくは
D = 4k2 - 8k - 4 > 0
∴ k2 - 2k - 1 > 0
ここで k2 - 2k - 1 = 0 を解くと k = 1 ± √2
∴k < 1 - √2, 1 + √2 < k
となります。数学記号は正確に使いましょう。決して教科書に書いてないような自分だけがわかる意味で使ってはいけません。
数学の答案には数式だけでなく日本語による文章を書くようにという注意を先生からよく聞くと思います。特に「場合の数・確率」の問題はどのように考えて解答したかを文章でつけなければ丸はもらえません。そんなことを言われても何を書けばよいかわからないという人は教科書の例題を見返してみてください。そこに書いてある程度の説明は最低限必要です。(たまにページ数の関係で簡潔すぎるものもありますが。)ただし誤解してはいけないのは、文章を書けば式を省略してよいという訳ではないことです。
問題3
y = -x2 + 10x の最大値を求めよ。
解答例5
平方完成すると、 x=5 で最大値25
これは満点の半分ももらえません。出題者は『平方完成という言葉を知っているか』ではなく、『実際に平方完成が計算できるか』を求めているのです。『 y = -(x-5)^2 + 25 』という式は絶対に欠かせません。同様に「~の定理より」と書いてすぐに答えを書く人もいますが同じ理由で減点となります。
問題4
三角形ABC で BC = 6, A = 60°, C = 45°とする。ABの長さを求めよ。
解答例6
正弦定理より AB = 2√6
これも説明無しに答えだけを書いたとしか読まれません。『正弦定理がどのような定理か』を示す式がないからです。他に説明とは読んでもらえない言葉として「これを整理して~」や「これを解くと~」というものがあります。
問題5
三角形ABCでAB = 2, AC = √6, B = 60°とする。BCの長さを求めよ。
解答例6
余弦定理より 6 = x2 + 4 - 4x cos 60°。これを解いて、 x>0 より x = 1 + √3
この答案はまず最初に述べた『 x が何を表すかを書いていない』という点と、『方程式をどのように解いたかを説明していない』ところが問題です。自分で方程式を立てれば解くのは当たり前なので、「これを解くと」と書くスペースがあるならその過程を書きましょう。この例では『 x2 - 2x - 2 =0 』という整理された2次方程式や、吟味する前の『 x = 1 ± √3 』などです。もし途中で計算ミスをした場合には正しく書けている所まで加点されることがありますが、「整理して」の一言の後で間違っているとどこまで正しく計算できたかがわからないので部分点はもらえなくなります。
箇条書きで大切なことをまとめてみましたが、心当たりのあるものはあったでしょうか。まずは数学記号の意味を知り正しく使うということが大事です。自分が書いた答案を先生に見てもらったり、模試の答案を見返したりして確認してみましょう。
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