フォレストーク

『私の敬愛する作家のMy Best 3 No.2』

平成20年10月15日

代表  河村 勝之

―吉村 昭の巻-

今年2008年は、亡くなられた方や引退される方が各界で相次ぎ、大きな節目の年となりそうですが、一昨年に亡くなった作家の中に、吉村昭という記録文学の巨匠がいます。

取り上げる作品を三つにしぼるのは第一回目の司馬遼太郎の時以上に、とても難しかったのですが、大作・名作と言われるものは今回は取り上げず、自分の読後の印象が強かったものを選んでご紹介いたします。

私の父が、吉村昭と同じ年齢ということもあり彼の作品の熱烈な愛好家で、私もその父の影響を受けて大学生の頃に読み始めました。

今から25年前、北海道へ渡ってくる直前に、吉村昭の『破獄』(新潮文庫)(先日、緒形拳の追悼番組としてNHKのBS2で夜中にやっていました。)を読みました。この作品とは、主人公の強烈なエネルギーに何故か自分の中の闘志が底の方から引き出されるという、奇妙なしかし稀有な出会い方をしました。読売文学賞を受賞した作品です。

次に、吉村昭の戦争文学、記録文学の流れからはみ出す作品ですが、印象深い自由律俳句を残した俳人、尾崎放哉の人生を描いた『海も暮れきる』(講談社文庫)。「せきをしてもひとり」「こんなよい月を一人で見て寝る」は、中学や高校の教科書にもよく掲載されるほど有名な俳句です。主人公放哉の強烈な孤独が身にしみます。

最後は、吉村昭の数ある医学小説の中から吉川英治文学賞を受賞した、『ふぉん・しいほるとの娘』(新潮文庫上・下巻)をご紹介します。幕末の数ある蘭学塾の中でも特に名高い、長崎の鳴滝塾。その塾頭フォン・シーボルトは、日本人女性との間に娘を授かりました。この娘イネは、数奇な運命に翻弄された後、見事に成長して日本で初の女性医師となりました。激動の日本を生き抜いた、たしかな「日本人」がここにいます。おすすめです。

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